マンガでわかる リアル中国人
近くて遠い国、中国。個人的には、中国人は日本人に見た目も似ているし、漢字を使って箸を使うなど共通点も多いのに、やっぱり考え方が違う、ということで、西洋人と分かり合えないときよりも残念な気持ちが強くなって、妙な距離を感じてしまうように思う。たとえば、この『マンガでわかる リアル中国人』で書かれている例だと、縁起を担いだり、縁起物に喜んだりという行動様式は似ているけれど、何を縁起が良いと思うかは違う。それから、手で数字を表すサインも途中まで日本と同じなのに、途中から違う。
このマンガでは、旅行者である中国人と日本に在住の中国人、そして日本人が交流しながら文化の差異を紹介する形式で、とても面白い。でも、違いを認識せずにいきなり接触すると、勘違いしてイライラしてしまうことも多いのかもしれないと反省。違う文化と考え方を持つ人たちであることを認識して、比較を楽しみたいところ。
なお、本書は簡単な会話がピンインと一緒に紹介されているので、これだけで中国語の勉強にはならないけれど、同僚や友人に一言でも話しかけたいときや自分が観光地でお店でもやっていたら役立ちそう。
PR視点のインバウンド戦略?訪日中国人の興味は「爆買い」から「体験」、「都市」から「地方」へ
- 作者: 電通パブリックリレーションズ,電通公共関係顧問鄭燕,日中コミュニケーション可越
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
- 発売日: 2016/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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AI時代の人生戦略 「STEAM」が最強の武器である
あらゆるビジネスにサイエンスやテクノロジーが絡んでくる時代、サイエンスやテクノロジーを誰もが避けられなくなる。そして、ビジネスの世界にもう一つ進出しているものがデザイン戦略に代表されるArt。テクノロジーとArtは密接につながっている。ということで、STEAM=STEM (Science, Technology, Engineering, Mathmatics) + A (Art)が重要になると本書は主張する。現存する職業の半分はAIに置き換えられると言われるなかで、AIに使われる側でなく使う側に回ろうと思ったら、少なくともSTEMの理解が必要。『残酷な10年後に備えて今すぐ読みたい本』として、今起きていることや近い将来を予測するうえで参考になる書籍のガイドもあるので、とても親切な一冊だった。
現時点ではSTEAMは教養レベルには落ちていないので、ある程度新しい物好きであればビジネスの世界で優位に立てるのではないかという気になった。新しい物好きの条件は、どうやら「Perfume」「BABYMETAL」「OK Go」。音楽としてではなく、プロジェクションマッピングを含めた総合アートとして楽しむ。音楽だけだとつい昔はよかったと思ってしまうけれど、YouTubeで見るとやっぱり面白い。その昔、マイケル・ジャクソンが自身のプロモーションビデオを"short film"と呼んで、他のパフォーマーとは圧倒的に異なる世界を見せた時の衝撃に近いかもしれない。なお、ゲームの世界では、ツムツムやパズドラやポケモンGO止まりでこれらをゲームだと思っていてはだめらしい。やっぱり手軽なところだけ試したのでは最先端の技術には触れられない様子。
一方で、イマジネーション、クリエイティビティ、SFの本質という視点も面白くて、古典的なSFが与えてくれる示唆についても触れられている。星新一やジュール・ヴェルヌを読み返すのも良いかもしれない。しかし、安部勤也の書籍か何かで昔の知識人がたった数冊の書物を読むにも人生が短すぎると嘆いていた話を読んだ記憶があるけれど、そんな時代に比べると21世紀はインプットすることが多いな。
AI時代の人生戦略 「STEAM」が最強の武器である (SB新書)
- 作者: 成毛眞
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2017/01/05
- メディア: Kindle版
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大人はもっと遊びなさい 仕事と人生を変えるオフタイムの過ごし方 PHPビジネス新書
- 作者: 成毛眞
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2016/08/05
- メディア: Kindle版
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具体と抽象
部下がもう少し考えてくれたら、というのは多くの管理職の共通の悩みだと思う。一を聞いて十を知ってほしいというのが高望みだとしても、せめて同じような説明を何度も繰り返したくないと思ってしまう。バックグラウンド(学歴、職歴、経験)によらず、最初から要領よく色々なことが吸収できる人がいる一方で、いつも懇切丁寧な説明をしなければ動けない人がいる。本書を読むと、この違いが腑に落ちる。なぜ、上司と部下の会話がかみ合わないかというと、見えている世界が違いすぎるからだ。見えている世界の抽象度が異なると、上司はいつも言うことが変わっているように見えるかもしれないし、部下は表層的なことしか考えられていないように見えるかもしれない。
歩み寄るために、具体的な会話に翻訳したり、相手の考え方を推測して合わせることがとりあえずの解決策のようだ。具体的な世界しか見えない人が抽象的な世界を見えるようになるためのトレーニング的な解もあると、私も上司の目線を理解できるようになるかもしれないし、部下たちも悩みが減るような一冊になりそうだけど、そこまでは示されない。かみ合わないもやもやの正体が見えてくるという意味では有用なので、部下への指導や指示に悩みを持つ中間管理職は読んでみるべき一冊だと思う。
僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意
インテリジェンスのプロである佐藤優氏と解説の天才である池上彰氏の対話形式で進んでいく、チェックするべき媒体と情報の読み方。最後に70の極意と紹介された新聞・雑誌・ネット・書籍に関する情報が一覧されている点は実践に移しやすくて実用的。
今回は地方紙の読み方がとても面白かった。地方独特の情報があるだろう、というのは当然のことだけど、日露関係が動くときは北海道新聞に情報が流れるとか、共同通信の情報がそのまま流れるとか。それにしても、共同通信が社説参考まで提供しているとは驚いた。
そして、衝撃を受けたのは『50年前のカッパ・ブックスが、いまの岩波現代文庫のレベルという言い方もできる』という一文。これは加藤周一氏の『読書術』が当時はカッパ・ブックスから、今は岩波現代文庫に収録されていることを指しているのだけど、昔はエンターテインメントだったものが今はやや難易度の高い読み物になっていると。ときどき実家の書斎にある本を読むと字も小さいし漢字も多く読みにくく感じてしまうけれど、そういうことなのか。それから、通俗化に関するお二方の意見も興味深い。ただ平易に書かれているのではなく、背景にある知識や理解が重要というのは、昨日読んだ調査報道での『100取材して10を書け。10しかわからなければ1しか書くな』に通じるものを感じる。
また、本書ではビジネスパーソン向けということが意識されているので、地理や歴史の教養的な部分を手っ取り早く学ぶための読書も参考になる。教科書に戻るというのは色々な人が提唱しているけれど、地理A・歴史Aといった進学を前提としない高校生向けの教科書はあまり言われていないように思う。
教養の基礎力という点では、外国人と話すには聖書を読まなくては、ダンテを読まなくては、といったものがいくつかあるけれど、日本を語るには漱石ということなので、今年はいくつか再読してみたいところ。
僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意
- 作者: 池上彰,佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/12/16
- メディア: 単行本
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大国の掟―「歴史×地理」で解きほぐす (NHK出版新書 502)
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2016/11/08
- メディア: 新書
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騙されてたまるか 調査報道の裏側
足利事件、桶川ストーカー事件で真実に向かい合ってきたジャーナリストが、調査報道について語る。他の著書のサマリーのような一冊でもあるけれど、だからこそ調査報道とは、という部分にフォーカスできているように思う。どの案件でも、リスクを取りながら取材を行い、真実に迫る。その中で思い込みは持たず、すべての情報は裏を確認する。別の媒体でも『消極証拠を見逃さないための白くする取材』の重要性が語られているけれど、やっぱり『ここまでやったから言える』と自信を持てる状況にしないと、日本テレビや文春のような大きな看板を守りつつ衝撃的な情報を継続的に発信することはできないのだろう。
そして、最期のまとめにあった『100取材して10を書け。10しかわからなければ1しか書くな』という言葉は、とても印象に残った。私も報道ではないけれど、調査に関する仕事に長く関与していて、『1000枚の報告書を作ることは何の価値も生まない。それを10枚に凝縮して初めて価値がある』と尊敬する上司が言い続けるのを見てきた。価値のある情報、意義のある情報の背景には、大量のそれを裏付ける情報が必要になる。時には執念を伴うような調査が必要。
権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか
- 作者: 高田昌幸,大西祐資,松島佳子
- 出版社/メーカー: 旬報社
- 発売日: 2016/11/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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経済学者 日本の最貧困地域に挑む
レクチャーをきっかけに大阪維新の会に呼ばれ、橋本市長の元で改革を推進することになった社会保障関係の学者が特別顧問として行政の世界に入り込み、誰もが知る『あいりん地区』 の改革を実地で行った記録。貧困問題にそれほど強い関心がなくても、大阪市という巨大な地方自治体における課題解決のプロセスは興味深いかもしれない。
政治関係者でも行政関係者でもない大学教授ということで、利害関係がないせいか、あらゆる関係者に対して中立的な印象をもって事に当たっている様子が見受けられ、とても読み進めやすい。一定の成功を収めて恨み節を出版する必要もないから、かもしれない。
貧困をなくすことは簡単なことではないけれど、それ以上に行政の世界で何かを進めるということは難しい。本書でも、住民の理解を得るための徹底した情報公開、対話や役所の巻き込み(役所間の位置付けも含め)といったところに非常に注意を払って働きかけたことがよくわかる。本書を読んで思ったのは、結局は人が世界を動かすということ。誠意をもって事に当たる。筋の通った思いがあれば、人は集まるし動く。役所にしたって、縦割り、セクショナリズムといった課題はあるけれど、それに不平不満を述べても始まらない。様々な課題があるとはいえ、個別の職員は大半が地域を良くしたいと思って働いているのだから、協力しやすい下地を作れば協力してくれる。
それにしても、熱い一冊だった。厚みもあるけれど、一気に読めてしまう。
逢えない夜を、数えてみても
ピアノの調律師と自動車の整備士のカップル。とても良い関係でありつつ、主人公は中年男性にも心惹かれ、という良くありそうな始まりだけど、後半の展開は予想を裏切られ、面白く読み進めた。最期の結論も少し驚いた。男女どちらの立場に立ってみても、その判断は自分だったらできないなと思うけれど、だからこそ読んでよかった一冊。
随所に差し挟まれるこだわりの車や靴に超高価なコーヒーといったアイテムがおしゃれな雰囲気を醸し出す一方で、甘糟りり子さんの文章は全体的に良い感じの湿度を感じる。官能的というか。読むまでに少し熟成させてしまったけれど、書中に登場するブランドのブティックで行われていたタイアップイベントのトークショーで、LEON創刊に参画していた編集者が印象に残った個所を朗読しながら赤面していたことを思い出す。