透明人間の納屋
失踪事件の謎解きに必要な材料を出すと、最後の手紙の衝撃が軽減してしまうのはわかるけど、密室トリックについてはちょっと納得のいかない部分あり。まあ、占星術殺人事件 (講談社文庫)からそういったお約束の部分に沿ってはいない作者。それにしても今回のは…いっそSF展開の方が良かったかも。
しかし、失踪事件とは別に心優しい隣人の正体と背後にあった事情やその後の人生の苦悩が重要なもうひとつの要素となっていて、こちらは何とも切なく心に残りました。透明人間は物理的に透明なのではなく、存在が透明な状況であり、人を透明にする薬はここでは国家だったけど、ほかにも似たような気持ちを味わう状況にいる人が世の中にはいるかもしれません。