賢者の愛
はじめて読んだ山田詠美の小説は「蝶々の纏足」で、そこでは自分が愛されることを当然の権利として疑わない少女と大人びた少女の歪んだ友情と反発が何とも美しく描かれていたことを思い出す。
「賢者の愛」は「痴人の愛」を下敷きにしているものの、影響力を行使する立場の遷移、葛藤から破滅に至る展開、といった構成は似ているようでいて、より複雑な心情が描かれているように思った。「痴人の愛」が男女の恋愛だったのに対し、「賢者の愛」が恋愛に同性の友情と反発を付加しているのだから複雑ではあるけれど。
そして、ちょうだいお化けのユリが秘めている狂気の底知れなさ。ただの変わった我侭少女がそのまま大人になっただけかと思いきや、意外に冷静な計算をしていたり、とんでもない行動に出てみたり。本当に怖い。