CoffeeAndBooks's 読書日記

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貨幣の鬼 勘定奉行 荻原重秀

 学校の歴史で習う新井白石といえば、儒学の教えをまとめた学者であり、5代将軍綱吉の悪政により傾いた幕府の政治を儒教精神で改革する正徳の治を主導した立派な人物のように映るが、実際のところ正徳の治は抜本的な改革には至らず、次代の享保の改革に引き継がれた部分があるとはいえ、新井白石は罷免されている。

 「貨幣の鬼 勘定奉行 萩原重秀」は、正徳の治で悪貨乱造と批判された貨幣政策を主導した勘定奉行である萩原重秀に焦点をあてていて、幕府にとって有益な事業を主導する姿が描かれる。萩原側に立って当時の状況を考えると、貨幣政策については必然のように見える。一方で新井白石の主張は時流に合わない印象がある。しかし、最終的には新井白石が勝利し、大量の記録を残す新井白石によって萩原重秀は悪評を残されてしまう。

 能力は高く信念により様々なことを達成できる一方で、政治力に欠けるところあり、僻みや妬みに対処することがあまりうまくなく、引き摺り下ろされる、そんな人物に社会人を長く続けていると一人は会うと思う。萩原重秀は、まさにそんな人物のように思う。

貨幣の鬼 勘定奉行 荻原重秀 (講談社文庫)

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