下流の宴
主人公の由美子の下世話な選民意識が素晴らしく描かれているけれど、これは成功した一方でコンプレックスから開放されていないことを各種エッセイでも明らかにしている作者ならではだろうか。
人との比較をして上流・下流というのも何とも嫌な感じだし、得られるものもなさそうだが、専業主婦の由美子はそれをよりどころに生きていてる。そして、子供たちも変な自意識だけは受け継ぎつつも、由美子の尺度では失敗をする。自分の望む生活を提供してくれない男性には尽くせない長女に、頑張り屋さんで自分を置いて成功しそうな女性とは共に生きられない長男は、相手が自意識に見合わなくなったり、相手が段々と成長してしまったり。ちょっと現代を風刺しようと詰め込みすぎな印象もあるけれど、これだけ色々な登場人物がいると、感情移入しないまでも身近に感じられる人物が一人は出てきて面白いのかもしれない。