CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

旅行者の朝食

 米原氏の著作で、はじめて読んだのは「不実な美女か貞淑な醜女か」。当時は同時通訳という職業についても曖昧なイメージしかなかったため、「美しいけれど原文の意味に忠実でない訳」と「美しくはないけれど原文の意味に忠実な訳」のいずれが望ましいか、という問いはとても興味深かった。そして、同時通訳にまつわるエピソードや、同時通訳の世界にいる面白い人たちのエピソード、通訳される要人たちに関するエピソードが面白く、それ以来、米原万里氏の著作は一通りそろえて楽しんだ。

 そして、最近の没後10年フェアを見て、「旅行者の食卓」を再読。旅行者の食卓とは、旅先の食事に関する話ではなく、実在するソビエト連邦の缶詰の名前。とにかく何の肉なのか分からない謎の食べ物らしい。一度でも見てみたいけれどソビエト連邦が崩壊してから25年が経過した今となっては夢の食事かもしれない。夢の食事と言えば、米原氏が子供時代に食べて以来ずっと求め続けていたというハルヴァ(キリル文字でХалва)。この本を読むと、絶対に食べたくなるだろう。私もトルコのハルヴァは食べたことがあって、食感はそれほどではなかったけれど味はとても気に入った。基本的に中東のお菓子は濃縮された甘味が素晴らしいのだけど、私が試したハルヴァも紅茶にもコーヒーにも合う素敵な甘味だった。でも、米原氏のギリシャ産のハルヴァはそれとは少し違う様子で、是非とも一度は青い缶に入ったギリシャのハルヴァを手に入れたいもの。

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

 
旅行者の朝食 (文春文庫)

旅行者の朝食 (文春文庫)