CoffeeAndBooks's 読書日記

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国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動

 海上自衛隊の特殊部隊を創設した方による、創設の経緯と創設後の訓練に関する思想、退官後のフィリピンでの生活。書きぶりは落ち着いているものの、ものすごい迫力というかプレッシャーを感じる一冊だった。

 読む前は思想的に偏った内容を心配していたけれど、リーダーシップの観点から評価されている方も多かったので読んでみたところ、予想はあっさりと裏切られた。「国のために死ぬ」という行為を美化することもなければ、否定することもない。ただ、何かを守るには命を懸けるしかない可能性があること、命を懸けるというのがどんなことなのか、実際に命を懸けて生きている人はどんな人なのか、ということが綴られている。特に、フィリピンで出会った弟子の女性に関するエピソードは強烈。

 日本で生きていると、自由と平和は所与のものと錯覚してしまうことがあるけれど、世界にはそうでない国や地域がたくさんある。日本にも多くの脅威が存在していて、何かを勝ち取る必要は今のところないものの、守らなくてはいけない国と国民が存在している。特殊部隊で覚悟をもって訓練して実務に就いている人たちが多くいることに感謝しつつ、彼らが危険を受け入れつつ守るべき国と国民を構成する一人としての責任をどのように果たしていくのか考えなくてはならないと感じた。何をするべきなのか、すぐに結論の出せることではないけれど。