貴婦人の訪問
「むかし妖精、いま妖怪」と自称している涼風真世。50歳過ぎてこの美貌は確かに妖怪としか言いようがない。そして、普段のかわいらしい佇まいとは全く異なる迫力、凄み。クレア役は涼風真世以外ありえないと思わせる。歌も素敵。
なお、このミュージカルは悲喜劇といいつつ喜劇的な要素はとても少なくて、自分も含めた多くの人の嫌なところが凝縮されて見せられるので、後味は悪い。アルフレッドのコミカルな台詞はあるものの、若い頃に恋人にひどい仕打ちをしたアルフレッドが徹底的に追い詰められる様は完全に悲劇。
突然、アルフレッドが死ぬことを条件に多額の寄付をすると宣言するクレア。最初はクレアを非難する人々もお金の力に取り込まれ、最後はアルフレッドを責め始める。お金が人を狂わせる様は見ていて苦しくなる。アルフレッドはどうしようもない人間で、恋人を守るために苦境に陥るよりも小金のある女性を選んだり、追いつめられると家族を捨てて逃げようとしたり、本当にどうしようもない。奥さんは守ろうとしてくれたのに。でも、最後の最後に奥さんまで。。。彼に同情できる要素はないけれど、何とも悲しい。そして、町の人々も。
クレアをそんな風に変えてしまったのもアルフレッドであり、町の人々であり。少なくともアルフレッドの子供が車を運転する年齢になるくらいだから、相当な年月をかけて復讐のために着実に行動してきたクレア。でも、恋人に裏切られただけでなく、多くの人から悪意に満ちた行為を受けるなんて想像もできないだけに、クレアには同情してしまう。
- アーティスト: Chita Rivera,Roger Rees,Fred Ebb,John Kander,John Doyle,Terrence McNally,Graciela Daniele
- 出版社/メーカー: Broadway Records
- 発売日: 2015/07/10
- メディア: CD
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