CoffeeAndBooks's 読書日記

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アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男/The People vs. Fritz Bauer

eichmann-vs-bauer.com

 本作は、第二次世界大戦後の戦争犯罪者に関する捜査を主導する検事長フリッツ・バウアーがスポットライトを浴びる。正義のため、信念のため、捜査を止めようとする組織に屈することなく身柄を確保し、裁判を行うために動き続ける。単純に復讐のためではないので、心情としては共感するものの、自分に同じようなことができるかというと難しいかもしれないと思ってしまった。そして、友人が戦争犯罪者であって、自分に権力があった場合に、自分がどのように振舞うかということを考えると、フリッツ・バウアーを妨害する立場の心情も少しわかる。特に、具体的な自分の周りの人を想像してしまうと。だから、"the Banality of Evil" (悪の凡庸さ)という話になるのだろうけど。

 

 第二次世界大戦を総括する映画がここのところ多い印象だけど、戦時中のものに比べて戦後処理(アウシュビッツ裁判関係)を立て続けに観ているような気がする。戦争犯罪者を追求しようとする若い検察官を主人公に、戦争犯罪者の実態が実は平凡な市民で、誰もが犯罪者になり得る可能性を描いた『顔のないヒトラーたち』顔のないヒトラーたち/Labyrinth of Lies - CoffeeAndBooks's 読書日記アイヒマンが逮捕され、開廷される歴史的な裁判を世界に配信するチームに焦点を当てた『アイヒマン・ショー』アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち/The Eichmann Show - CoffeeAndBooks's 読書日記。収容所に収容されていたユダヤ人女性の再生の物語である『フェニックス』あの日のように抱きしめて/the phoenix - CoffeeAndBooks's 読書日記

 それから、第二次世界大戦を扱う映画のうち、ドイツに関連するものは同性愛についても触れていることが増えているような気がする。本作でも、フリッツ・バウアーと部下がそれを理由に失脚させられようとしたり、脅迫されたり。『手紙は憶えている手紙は憶えている/REMEMBER - CoffeeAndBooks's 読書日記でも、同性愛を理由に収容所に収容されていた人が登場していた。やっぱり、昨今の多様性への認識が高まったことによるものなのだろうか。

 

 

 

フリッツ・バウアー アイヒマンを追いつめた検事総長

フリッツ・バウアー アイヒマンを追いつめた検事総長