国盗り物語
最近、進められて読み始めたら止まらず一気に読んでしまった。
美濃の蝮 斎藤道三が油売りから一国を手中におさめ、娘の嫁ぎ先である織田信長が天下を取り、娘のいとこにあたる明智光秀が謀反を起こし3日天下の後に敗れるまで。
近年の研究で、油売りから国主への成り上がりは一代で達成したものではなくて、親子二代の成果と言われているようだけど、二つの人生を歩む、それもいずれも美女と栄華がついてくるなどというのは誰もが夢見ること。それだけでも面白いけれど、人間関係や心情の描写が素晴らしく、利用された人たちにも血が通ってみえる。
また、明智光秀が道三に仕えたことがあるかどうかが分かる情報はないとも聞くけれど、道三の弟子である信長と光秀という関係性が入ることで、少し気持ちがわかるような気もした。人の面前で恥を欠かされたことを恨み、という話も有名ではあるものの、相手は信長だし、と思えば謀反を起こすには至らないような気がしてしまう。ただ、同じように天才に師事しつつ、ある部分では自分が優れていると思っている相手が天下を取ろうとしている。そして、天下を取った暁には自身が粛清されるであろうことが予想できる、となれば、結末の予測も難しくはない一方でほかの選択肢もないという事態も想像できる。
元々は道三の生涯だけを描くつもりだったという国盗り物語であるけれど、この後編は続編ではなく全編を通じて読むことに価値がある一連の物語、と思わされた。