CoffeeAndBooks's 読書日記

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江戸の備忘録

 昨年、ヒットした映画「殿、利息でござる」の原作『無私の日本人』の作者による江戸の教育事情などを含む歴史雑学が詰まった一冊。古文書にあたり出典を明らかにしつつ分かりやすく読みやすい文章で書かれているので、安心して読めるし、仕入れた情報は思わず誰かに話したくなる。意外なことに多かった寺子屋の先生に占める女性の率の高さ、一方で奥屋敷で行動の不自由な女性の犬の溺愛ぶりを示す狆の墓など興味深い。年賀状の原点は年始のあいさつ回りで置いて帰った名刺というのも、『とりあえず名刺置いて帰ります』というような営業につながっているのだろうか、と考えると面白い。

 興味深いエピソードだけでなく、鈴木今右衛門の清貧エピソードなどは思わず涙が出てしまう。飢饉に際して人を救うために田畑・家財道具を売り払った夫に晴着を売って答える妻、そして最後には震える飢えた女の子を救うために自分の娘に着ている二枚綿入れのうち一枚を脱いで渡すよう促し、娘は快く応じる。それこそが夫婦が娘に伝えようとしていたことだった、と。私も見習わなくては。 

江戸の備忘録 (文春文庫)

江戸の備忘録 (文春文庫)

 
殿様の通信簿 (新潮文庫)

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江戸の家計簿 (宝島社新書)

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