CoffeeAndBooks's 読書日記

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管見妄語 とんでもない奴

 新刊コーナーから何となく購入し、喫茶店で最初のエッセイを読んで一瞬後悔。著者の華麗なる一族ぶりと人脈が披露され、何のオチもなく、ただそれで終わる。まさか、一冊すべてこの調子ではないよね、と読み進め、トルコ旅行とトルコの親日ぶりにおける歴史的背景、といったところから面白くなって安堵した。人脈自慢にも穂積真六郎との交流のように、こんな素晴らしい日本人がいた、ということを教えてくれるエピソードも入っていて、勉強になる。

 私の父と同世代の著者ということで、主義主張として相容れないものを感じるところはあるものの、『平等平等、あぁうるさい!』という帯から想像していたような過激な偏った論ではなく、筋として理解できるところも多く鋭い考察が多く、とても面白かった。

 そして、身体能力の衰えについて書いているところで、それでもお年を考えると相当に身体能力が高そうで驚いた。体の健康は頭の健康でもあるのか。

管見妄語 とんでもない奴 (新潮文庫)

管見妄語 とんでもない奴 (新潮文庫)

 

 家族の思い出として語られる新田次郎の執筆、編集者との付き合い方と最近の小説の作られ方の違いから、最近の小説がつまらないと書かれているところは、なるほどと思う。人の手が掛かれば何でも良いわけではないけれど、やっぱり細部が気になって読み進められない本も最近は多い。司馬遼太郎に史実オタクが嚙みついて晩年は歴史小説を書かなくなったなんて聞くと勿体ないと思う一方で、あまりにも荒唐無稽な歴史の借用や科学技術の展開をするならいっそ完全に世界を作りこんでファンタジーにしてよ、と思うことが多いのも事実。

 しかし、著者が新田次郎のご子息だったとは!と思ったけれど、よく見るといろいろなところでプロフィールに書かれている。自分ごとながら、人の目の拾える情報ってあてにならない。

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

 
新装版 武田信玄 風の巻 (文春文庫)

新装版 武田信玄 風の巻 (文春文庫)