CoffeeAndBooks's 読書日記

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いちまいの絵

 元キュレーターであり、絵画や画家をテーマにした小説も多い原田マハ氏による26枚の絵とそれにまつわる画家だったり時代だったりが紹介される、エッセイ的な一冊。有名な絵画は世界中で多くの人が詰めかけるので、なかなかじっくりと向き合える機会は得難い。そもそも、世界中の美術館を巡ることも難しいし、住んでいる地域によっては何とか美術館展も滅多にはやってこない。その点、仕事でも絵画とかかわり続けてきた専門家である著者は何度も素晴らしい絵画を実際に見たり、特別に一人向き合う機会を得たりとうらやましい。でも、そうやって感じたことを変な力みなく、上から目線でもなく共有してくれるスタイルは嬉しい。きっと、次に会う絵とはもっと対話ができるはず、と思える。ゲルニカはぜひタペストリーも見たいな。

 私は絵画には詳しくないものの、ここで取り上げられる絵画は少なくとも写真・画集レベルでは見たことがあるものばかり。おそらく多くの人にとっても同様なはず。一応、カラーのページで絵を紹介しているけれど新書ということもあって小さなものなので、少し記憶にある画像で補完したほうが良いかもしれない。

 著者が「いちまいだけ所有できるとしたら」と挙げる画家がゴヤではなかったことには少し驚いたけど(マハという名前は作家として語感で選んだのかな)、納得感のある一枚と言われる画家にさらに驚いた。素人にはただ意外。目が肥えるとわかる良さなんだろうか。