CoffeeAndBooks's 読書日記

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オン・ザ・ミルキー・ロード/On the milky road

onthemilkyroad.jp

 3つの実話と多くの寓話に基づく、という隣国と戦争中のとある国が舞台のお話『オン・ザ・ミルキー・ロード(On the milky road)』。80年代の体操選手だったという主人公・コスタのフィアンセ?であるミレナの台詞や多国籍軍の介入など、ユーゴスラビア内戦を思わせる要素が沢山。監督エミール・クストリッツァといえば、ユーゴスラビアの歴史を描いた『アンダーグラウンド』が著名だけど、この映画はかなりアプローチが違う。

 本作では、旧ユーゴスラビアらしき国の田舎で、トラウマがもとで恐怖が麻痺したとみえるコスタが、ロバに乗って銃弾の飛ぶ中でミルク運びをしている。そのミルクを供給している農家のミレナは、ある日、花嫁を買ってくる。なんと花嫁は2時間の間ずっと名前がなく、クレジットにも'Bride'とあるだけ。美しいモニカ・ベルッチが演じるBrideは、美貌が元で悲劇的な過去を持ち、この戦時下も追われる存在。美しいことが悲劇の元、なんて台詞に説得力を持たせられるのはすごい。

 なお、この映画は戦時下の話でありつつも、銃撃などの戦争映画的な場面は限定的。でも、冒頭の屠畜後に豚の血をためたバスタブにガチョウが次々と飛び込む場面など、別な形で気持ちがざわつく場面が多い。ミレナも別なホラー映画が一本作れそうな狂気を感じるし。大時計の場面はチャップリンの喜劇的な、と言う感想も聞いたけれど、私にはあまり喜劇的に見えなかった。東欧ユーモアを解する感性がないのかもしれない。一方で、最後の最後のコスタが石を運んで・・・のくだりは少し感傷的な気持ちにさせられた。羊飼いのおじいさんの台詞も、重い。その重さを感じさせるのは、すごい映画だと思う。

 

 

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