CoffeeAndBooks's 読書日記

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ヒトラーを欺いた黄色い星/Die Unsichtbaren

 ここ数年は第二次世界大戦を振り返る映画が多く、正義と悪の簡単な対立ではなく個々の市民や兵士の葛藤や悪の凡庸さのようなものに焦点を当てた作品も多く作られ、戦争に対していろいろな視点から考えさせられた。

 本作は、ホロコーストを逃れるため戦争中のドイツで隠れて暮らすユダヤ人の物語。協力者がいなければ隠れることも難しく、協力者には当然リスクがある。そんな中で、消極的に協力する人もいれば積極的に協力する人もいるし、そうかと思うと同胞でも密告者となって敵側に回る人もいる。そんな中で生き延びた人たちと彼らがどうやって生き延びたか、を再現映像と本人のインタビューで紹介する。中には、もう天寿を全うしている人もいて、あらためてここ数年で語り継ぐために多くの人が声を上げたこと、その声を伝えようとしたことの切実さを感じた。

 それにしても、どうしてユダヤ人に対する憎悪があれほどになったのか、宗教的な背景や経済状況などいろいろと言われているけれど、そういった背景が腹落ちする環境にいない私には理解が難しい。昔観た「ふたつの名前を持つ少年」だったと思うけれど、ユダヤ人かどうかを確認するために割礼の有無を見せろと主人公の少年が追いつめられる場面があったことから、見た目には区別のつかない人が多くいたようで、本作でも髪の毛の色を変えた女性は、本人はびくびくしているものの、普通に街中を歩くことができている。文化の違いにしても、少なくともドイツ人とユダヤ人で友情を育んでいる人たちもいるくらいに共存しているわけだし。