CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

翻訳地獄へようこそ

 語学書なのか、エッセイなのか、なかなか分類に悩むところ。古今の誤訳に対して、なぜ誤訳が起きたのか(勘違いのもと、大抵たったひとつの単語の意味)、本来は同約すべきだったかを解説する。それだけを切り出すと教科書的ではあるけれど、随所に織り込まれる英米の事情であったり、題材とされていない書籍に関する情報であったり、が非常に豊富なので、英語に興味がなくても面白いのではないかという意味でエッセイとしてもよくできている。

 誤訳の数々を見て思うのは、予備校時代の講師に「知っている単語ほど辞書を引け」と言われたことや、乱読多読に合わせて精読も絶対にするべきと指導されたことを思い出し、感謝する限り。私は翻訳を生業にはしていないものの、ちょっとした文書の翻訳を見ることが業務にあるけれど、やっぱり知ったつもりの訳に飛びついてとんでもない誤訳をしている例を見かけることが多々ある。これは英語力もあるけれど、多面的に情報を見たうえで、自分の訳が本当に意味を為すか疑いを持てないことに起因するようである。自分自身も時にはそういったことをしている可能性もあるので、自戒を込めて定期的に読みたい一冊。

 同じ著者のほかの作品も読みたいけれど、どうやら絶版が多そう。Kindle化をリクエストしてお待ちする。 

翻訳地獄へようこそ

翻訳地獄へようこそ

 

 

続・翻訳の基本

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