CoffeeAndBooks's 読書日記

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妻への家路

 映画の衝撃が忘れられず原作も。 原作は600ページを超える大作で、映画になるに際して、結婚に至る経緯や逮捕、強制労働といった部分は省かれ、家族の関係と再会だけに焦点が当てられている。なので、原作は映画とは雰囲気も大きく違う。

 特に、原作では文化大革命がどんなものであったか、くっきりと描写していて、陸焉識(脱走する知識人であるところの本作主人公)がおかれる環境、収容所で受ける仕打ちはとても残酷だ。映画では、その後に焦点が当たっているので、陸焉識がどんな目にあってきたのか、についてはよくわからないまま。張芸謀は世代的にも文化大革命に当事者としての苦い思い出がある世代と思われるので、そういった背景もあるのかもしれない。それとも、単純に中国映画としては描くのがまだ難しいところもあるのだろうか。

 また、主人公の性格も大きく違う。なんというか、小説における陸焉識は、悲劇的な運命を追わされていることとは別に、思っていた以上の身勝手さを見せる。結婚した当初は妻への愛情はなく、その後、愛情を感じるのは良いけれど、家族に迫るであろう危険は一顧だにせず脱走を図る。妻は、どんな気持ちでこの愛を受け止めれば良いのか。原作を読んでから映画を思い返すと、ひとつひとつの場面の切なさが増す。 

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