森瑤子の帽子
大きな派手な帽子と真っ赤な口紅、大きな肩パッド。バブル時代にスノッブを自認し、バブリーな生活が憧れをもって見られていたという森瑤子のトレードマーク。私は森瑤子の作品は数冊しか読んだことがなく、当時は年を取ることへの焦りを感じとる素地もなく、ただ男女のおしゃれな恋愛を描いているという印象しかなかった。実際、友人の中でも同じような話を飽きずに書いていると言っている人もいたようだ。量産されて薄まった印象の作品も多く、忘れられる作品も多い作家かもしれない。まあ、それに対して「時代と寝た」と表現できるのは、ザ・森瑤子という感じ。
そんな彼女の、家族との葛藤は比較的表にでていたけれど、本書で彼女の若い頃の話を読んで思ったのは、月並みだけど寂しい人だったんだなと。人生は華やかで、彼女を悪く言う人が一人もいないように誰からも愛されているけれど、性格が寂しさを感じやすいのか、そう感じる環境を選んでしまうのか。でも、そんな人でないと、華やかな世界を読者があこがれるようには書けないのだろう。