CoffeeAndBooks's 読書日記

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工学部ヒラノ教授のラストメッセージ

 ヒラノ教授も最新刊では「終活大作戦」ということで、ヒラノ教授が東工大金融工学を研究する理財工学研究センターを最後の仕事として開設したのも20年前。

 

 本書は、ヒラノ教授(何のための仮名なのかわからないくらい『=著者』だけど)が、筑波大学でのブラック環境から、教授として東工大に迎え入れられ、研究者としての領分を広げ、理財工学研究センターを開設(のちにクローズされる)、という中でのあれこれを赤裸々に綴る。

 工学部の変わった研究者たちの生態については、私もよく理解しているけれど、今回面白かったのは経済学世界の裏側というか、近代経済とマルクス経済の関係。なぜ、資本主義の日本でマルクス経済学が幅を利かせているのか。そして、近代経済学近代経済学で国産とアメリカ産の派閥。あまり知らない世界だけに面白い。

 一方、一般教養の世界と専門研究の世界のデマケだったり、ヘッドカウントを巡る戦い・駆け引きだったり、というのも興味深い。この辺りは象牙の塔も一般企業の世界と通じるドロドロ具合。でも、教授や助教授は学問の世界で純粋培養されているせいか、年齢と経験のわりにナイーブにショックを受けたり悩んだりするので、こんなところで政治をするのは大変そうだ。

 

 金融バブルの裏側で金融工学を研究している研究者の世界がどんなだったか(東大の動向も少しだけ触れられている)、この世界に近いところで仕事をしている・していた人には興味深いだろうし、研究者を志す人にも興味深い一冊のはず。

 

工学部ヒラノ教授のラストメッセージ

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工学部ヒラノ助教授の敗戦 日本のソフトウエアはなぜ敗れたのか

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