CoffeeAndBooks's 読書日記

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GIRL

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 トランスジェンダーの高校生のララが主人公の本作は、トランスジェンダーであることに起因して悩む姿を描いているけれど、それ以上に10代特有の焦燥や思いつめてしまう感覚が描かれているように思った。

 転校して、女子に混ざってバレエのレッスンを受けるララは、更衣室も女子と一緒。最初に先生が「一緒に更衣室を使うことに抵抗がないか」と教室全体に聞く無神経さには衝撃を受けたけれど、それを経て更衣室は女子用を使うことに。でも、10代でホルモン療法をするかしないか、というタイミングなので体は男子なので、いろいろと苦労をする。そして、クラスメイトのいじめも徐々にだけど始まって、ララが静かに傷つく姿は少し泣ける。紹介記事では嫉妬によるいじめ、と書いてあったけれど、どちらかというと異質なものに対する抵抗感のように感じた。そして、全員がバレエに打ち込んでいて、プレッシャーにつぶされながら日々の練習や授業に取り組んでいるわけだから、受験を控えた高校生のように、周囲の弱い立場の子に意地悪してしまうこともあるかもしれない。それが、相手をどれほど傷つけるかなんて想像することもなく。

 ただ、救われるのは父親マティアスの徹底的な家族への愛。これがなかったら、完全な悲劇で映画が終わってしまう。戸惑いは見せつつも、常にララの意思を尊重するマティアスの姿は美しい。どこで働いてもタクシードライバーだから、というけれど、職場を変えて引っ越しをして、病院にも毎回付き添って、というのはすごいことだ。 最後のシーンは本当に心打たれる。

 なお、本作の主演を演じるのは男性のバレエダンサー。実際にはトランスジェンダーでないということで、批判する意見もあるようだけど、彼の表現力は素晴らしく、とても適した配役に思われた。トランスジェンダーの人から見てリアリティに欠ける部分があるのかもしれないけれど、彼の表情やちょっとした仕草から、ララの感じる居心地の悪さや焦燥感は十分に伝わってきたから。

13歳から知っておきたいLGBT+

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性とジェンダー (別冊日経サイエンス)

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