プライベート・ウォー/Private War
戦場ジャーナリスト、メリー・コルヴィンの伝記的映画。彼女が隻眼になった経緯、数年にわたり苦しむ深刻なPTSD、そして伝説的なホムスの現地レポート。実在の人物に関する映画なので結末は予測可能なものであるけれど、やっぱりショックを受けた。特に映画の筋としての驚きはないとはいえ、多くの日本人にとっては驚くべき瞬間の多い映画ではないかと思う。たとえば、東ティモールの現場やシリアの現場は、日本語の報道では中々目にしないものだったのではないかと思う。カダフィ大佐のインタビューも日本語では見なかったし。
そういえば前に見たインタビューはアマンプール氏のもので、その際のカダフィ大佐の台詞が今回の映画でコルヴィン氏が行ったインタビューとそっくりだったと思い出したのだけど、どうもコルヴィン氏のアレンジでABCのアマンプール氏とBBCのBowen氏が参加したということらしい(https://www.theguardian.com/media/2012/dec/23/marie-colvin-obituary-jeremy-bowen)。なお、この記事は彼女が勇敢であること、罪のない人々が殺される現実に深く同情していたこと、世界に報道しなければという使命感を持っていたことだけでなく、若い記者の育成にも熱心だったことが触れられていて、映画だけでは知ることのできない一面が伝わってくる素晴らしい追悼文だった。映画で見ると、ハードボイルドな一匹狼的な印象が強かったし、それも組織に頼らず報道する彼女の姿勢の一面ではあったと思うけれど。
しかし、壮絶な最期。これだけの使命感と行動力を持つに至った、ジャーナリスト マリー・コルヴィンを作り上げた幼少期や青年期も気になる。勇敢なジャーナリストと年老いたジャーナリストがいるなか、勇敢で年老いたジャーナリストはいない、と言いながら戦場を駆け巡る覚悟に改めて心を打たれる。こんな風にして報道している人たちがいる、ということに衝撃を受ける。この映画も多くの人に薦めたい映画。
グローバル・ジャーナリズム――国際スクープの舞台裏 (岩波新書)
- 作者: 澤康臣
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (2件) を見る