CoffeeAndBooks's 読書日記

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この世にたやすい仕事はない

 やっぱり時には書店に足を運ばないと、意外な出会いは期待できない。意外な出会いには、しばらく読んでなかった作家の新作も。津村記久子氏は、2009年の芥川賞作家。すっかり読んでなかったけど、読み始めた瞬間に懐かしい気持ちになる。読み心地の良さが印象に残る短編集のような一冊。

 仕事に打ち込み過ぎてバーンアウトして主人公が、ドモホルンリンクルのような仕事を求めて職安に行くことから始まる物語は、不思議な仕事、不思議な同僚、不思議な職場を短期間で転々とするさまを淡々としつつ随所に不穏な感じを混ぜつつ進む。一連の物語は、つながりがあるようでないようで、それも面白い。そして、不思議な出来事の数々は、あまり謎が解き明かされないままで次の仕事に移るところも。

 不思議な仕事の数々は職安で紹介されていて、現実世界が舞台ではあるけれど、普通に生きていると起こりえないことばかり。ある職場の同僚が街に起こす変化はファンタジーだし、ポスター張りの仕事と公園の仕事はちょっとしたサスペンス。おせんべい屋さんの仕事も最後の最後が少し不穏でサスペンス風味か。ポスターを張りに出かける街の飲食店やおせんべい屋さんの仕事で披露される話題のセンスも秀逸で、思わず笑ってしまう。

 各種の仕事は、こんな仕事があったらやってみたいものだ、と思うけれど、やっぱりずっとはできないよな、とも実感させてくれるので、長期休暇明けのリハビリ期間にも向いているかもしれない。

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

  • 作者:津村 記久子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/11/28
  • メディア: 文庫
 

 

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

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