アクトレス/Clouds of Sils Maria
この「アクトレス」のテーマは、女優という外見を商売道具のひとつとする職業の女性が老いと向き合うことなのか、はたまた若い女優の台頭に焦ることなのか、と予告編を見て想像していたけれど、それ以上に固定観念から離れて変化を受容するという性別や職業に関係なく多くの人が向き合うことだと思った。自分を変えることを恐れ、抵抗を感じるのも老いの一現象ではあるけれど。
本筋とは離れるけれど、主人公である大女優と付き人の関係は、ブエノスアイレス/Happy Together(ブエノスアイレス [Blu-ray])におけるYiu-FaiとPo-Wingの関係に似ているなと思った。相手のことを嫌いじゃないというか、好きなのに、傷付けずにはいられない、感じ悪く振舞わずにはいられない感じが。関係性は異なるものの、どちらも閉鎖的な環境で一緒にいる同性の話だ。終わり方も少し似ているような気がした。
そして、原題のSils Mariaは風光明媚な山のリゾート地で、そこで見られる自然現象であるマローヤの蛇が重要な象徴となっているけれど、マローヤの蛇がブエノスアイレスにおけるイグアスの滝なのだと思った。一緒に見ようとしていたものを見ることができたとき、片割れが隣にいない。
マローヤの蛇については色々な考察があるけれど、私は人生の象徴だと思った。何かよくわからないものの集合体がいつか意味のある形をもつ、ということかなと。そして、人は変化(成長)するとき、時には何か(本作では非常に近い距離のアシスタント)を失うということなのかと。