独裁者と小さな孫
架空の国の独裁者が権力の座を追われ、妻と娘は国外逃亡に成功するものの、独裁者である大統領と小さな孫だけが残り、宮殿に戻る前に政権が崩壊、二人は逃亡することに。
劇的な葛藤や後悔を表に出すことはしないけれど、逃亡の過程で自分の失策によって人生を狂わされた人々と対面する大統領が小市民的であることや大統領を裁こうとする民衆の暴力的な姿から、独裁者は異常な人間ではなく、何かあれば誰もがそうなるかもしれない、という気にさせられる。そして、良くない政治を変える過程に暴力が一切存在しないことは難しいだろうと何となく思っているけれど、どこかで変えなければ、小さな孫を膝に乗せて死刑執行のサインをする独裁者になる。
「銃で世界を救うことは絶対にできない。では、何があるかと言ったら、それは文化と芸術」と監督は語ったという。確かに、文化と芸術はいろいろなことを受け手に考えさせ、単純に「許せないから暴力」という姿勢からは脱却させるように思う。