CoffeeAndBooks's 読書日記

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銀のアンカー

 新卒就活についての漫画。天職とはいうけれど、社会人経験のない学生にとって、自分に向いた職業を探すことは難しい。特に、B to Bの世界は見えにくい。本書は、アメリカのカリスマヘッドハンターだった男性が日本に帰国するところから始まる。そして、本業であるヘッドハンティングも行いつつ、ちょっとした出会いから2名の大学生に就活指南を行う。アドバイスは極めてまっとうで、「まず行動」。そして、「業界に自分を合わせる」。最後は、「迷ったら金で選ぶ」。お金のことを気にするのはあまり好まれない風潮があるけれど、やっぱりお金は大切。ぜひ、就職活動をする若い方に読んでほしいシリーズ。

 行動の大切さは誰もが実感しているけれど、知らない人に会いに行ったり、説明会を聞きに行ったりというのは億劫なもの。でも、行動をしなければ失敗すらできないわけだから、これは重要。

 そして、業界とのフィット感も。ありのままの姿を受け入れてほしいという気持ちはよくわかるけど、面接ではお互いに気分よく働けるかどうかを見るので、フィット感は大切。それから、業界における服装や振る舞いには一定の合理性が潜んでいることもあるので、何も知らないうちから否定するのはもったいない。『プラダを着た悪魔』でも、主人公が着替えるところから成功へのステップが始まったように、業界っぽさを身に着けるところから学習曲線のカーブが急激に上がることも多い。

 最後のお金。本書では転職に否定的だけど、転職をせずに済む人は少数派になると私個人は思っている。そうすると、転職をする際の自分の待遇は前職の待遇によって決まることもあるので。そして、転職マーケットにおいて、新卒で年収800万円の職に就けば、3年目くらいでエントリーレベルではない職に移れる可能性がある。でも、新卒で年収300万円から始まって昇給も限定的であれば、10年目に転職をしてもエントリーレベルから再出発ということもある。後者で転職してくると覚悟はしていても辛いのではないかと思う。それでも、市場価値を覆す材料がなければ、この処遇になってしまう。それから、ドラゴン桜では東大はプラチナチケットと言っていたけれど、私の個人的な印象としては大企業出身もプラチナチケット。転職マーケットで履歴書を通すには会社から三顧の礼で迎えられるようなスーパー人材以外は、安心感のある学歴・企業名の恩恵を受けることも多いはず。