CoffeeAndBooks's 読書日記

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経済学者 日本の最貧困地域に挑む

 レクチャーをきっかけに大阪維新の会に呼ばれ、橋本市長の元で改革を推進することになった社会保障関係の学者が特別顧問として行政の世界に入り込み、誰もが知る『あいりん地区』 の改革を実地で行った記録。貧困問題にそれほど強い関心がなくても、大阪市という巨大な地方自治体における課題解決のプロセスは興味深いかもしれない。

 政治関係者でも行政関係者でもない大学教授ということで、利害関係がないせいか、あらゆる関係者に対して中立的な印象をもって事に当たっている様子が見受けられ、とても読み進めやすい。一定の成功を収めて恨み節を出版する必要もないから、かもしれない。

 貧困をなくすことは簡単なことではないけれど、それ以上に行政の世界で何かを進めるということは難しい。本書でも、住民の理解を得るための徹底した情報公開、対話や役所の巻き込み(役所間の位置付けも含め)といったところに非常に注意を払って働きかけたことがよくわかる。本書を読んで思ったのは、結局は人が世界を動かすということ。誠意をもって事に当たる。筋の通った思いがあれば、人は集まるし動く。役所にしたって、縦割り、セクショナリズムといった課題はあるけれど、それに不平不満を述べても始まらない。様々な課題があるとはいえ、個別の職員は大半が地域を良くしたいと思って働いているのだから、協力しやすい下地を作れば協力してくれる。

 それにしても、熱い一冊だった。厚みもあるけれど、一気に読めてしまう。

経済学者 日本の最貧困地域に挑む

経済学者 日本の最貧困地域に挑む

 

 

社会保障亡国論 (講談社現代新書)

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