CoffeeAndBooks's 読書日記

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「ココロ」の経済学:行動経済学から読み解く人間の不思議

 人間は必ずしも合理的ではない。効用というのも不思議なもので、効用が本人にとって高いから価格が高くても買うことがあるといっても、効用は測れない。たとえば、リンゴとミカンのどちらを買うか、予算的にどちらかしか買えない場合を除いては、価格でなく効用が選択に影響する。とはいえ、リンゴとミカンの効用は栄養価なのか、健康への効果(これも曖昧)なのか、味(好み)なのか、よく分からない世界だ。

 今回、さらに「ココロ」の不思議さを感じたのは、「内的動機」というもの。ここで紹介されているのは、『夢中になっているサルに褒美を与えると、サルのパズルの回答率が下がる』、そして『人間の場合も、金銭的報酬を与えると、パズルの正答率が下がる同じ現象が起こる』ということ。好きでやっているうちは打ち込めるのに、報酬が与えられると打ち込めなくなるのだろうか。

 オランダのトイレでハエの絵を描いたら使い方が向上したとか、この「ココロ」の癖を分析すると人の行動を変える効果も得られるらしい。やり方次第でコストをかけずに高い効果が得られるというのは魅力的だけど、人の行動とそこに影響を与える事象を分析するというのは難しそう。とりあえず興味深いネタが沢山散りばめられていて全編おもしろかったのだけど、使いこなすというのは別の世界なんだろう。

「ココロ」の経済学: 行動経済学から読み解く人間のふしぎ (ちくま新書1228)

「ココロ」の経済学: 行動経済学から読み解く人間のふしぎ (ちくま新書1228)

 

 

9割の人間は行動経済学のカモである ―非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす

9割の人間は行動経済学のカモである ―非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす