CoffeeAndBooks's 読書日記

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プライド

 すっかりご隠居の一条ゆかり。ちょっと懐かしくなって読み始めたら手が止まらない。昔から大好きだった「デザイナー」のタイトルを「プライド」にしようか迷っていた、という本人のコメントをどこかで読んだ記憶があるけれど、満を持して、という感じだろうか。たしか最後の長編のはず。

 もともとお嬢様の音大生である主人公、父親の破産、ハングリー精神でのし上がりつつ嫌がらせをしてくるライバル、と舞台装置は華やかだけど一昔前の少女漫画とは異なる人物模様。「デザイナー」の主人公はハングリー精神でのし上がるタイプだったし。やっぱり、絵柄や舞台装置は華やかだけど、ベタでない、というのが一条ゆかりの素晴らしいところ。現実感は全くないストーリーなのに、なぜか絵空事感もあまりない。そして、恋愛のパートも予想と違う着地が面白い。「天使のツラノカワ」でも良い意味で期待を裏切られる選択だったけれど、「プライド」でも健在。

 と書いていて思い出してみると、「天使のツラノカワ」とは似ているところがほかにもあった。とにかく、チャンスをつかむことの重要さにかける主張。登場人物が目の前にチャンスがあるのを、「コネだと思われたら・・・」と逡巡するのを一喝。どんなチャンスでもチャンスならつかむべき、というのが気持ち良い。本当にプライドがあったら、変な見た目を気にせず、チャンスをつかんでモノにして見せるもの、ということだろう。とても背中を押してくれる。