CoffeeAndBooks's 読書日記

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幻の女

 翻訳の例として挙げられることも多い書き出し”The night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was sour.” (夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。)はよく覚えているし、結末に驚いた記憶はあるのに、細部が思い出しにくい古典的名作。思い出して再読。

 派手な目立つ女性をナンパして食事と劇場に行ったところ、帰宅すると妻が殺されている。第一発見者となってしまった主人公は容疑者候補としては最有力。どうにもアリバイを証明できず、遠路はるばるやってきた親友がにわか探偵としてアリバイの証明に尽力するが、なかなかアリバイの証明となる女性が見つけられない。親友は必死に探し、ついには糸口をつかむかに見えるけれど・・・。

 最後に発覚する真相が意外過ぎて驚くものの、よく考えるとミステリーのお作法通りでもある。さすが、読み続けられる古典はよくできている。

 そして、古い時代の外国が舞台なのに、情景が浮かんでくる描写の素晴らしさ。記述は落ち着いたものである一方、段々と時間がなくなってくる焦りのようなものも伝わってくるリズム。新訳を読んだけど、これは翻訳もよいのだろうと思う。

幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 
幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))

幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))