CoffeeAndBooks's 読書日記

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潔白

 犯人とされた人物の死刑執行から15年後の再審請求。当然、それだけの理由があっての再審請求なので、過去の失敗を認めるわけにいかない検察は、策を弄して対抗する。

 本書は犯人捜しの要素もあるけれども、犯人捜し以上に、冤罪によって死刑になってしまった人物の無念や、その事実を認めることが簡単にはできない組織で働く人物模様や主人公の葛藤が主題と思う(犯人捜し自体は、ミステリーとして正統派の構成であることも手伝い、あまり難しくはない)。主人公がどうやって折り合いをつけるのか、または、正しい行動にかじを切るのか、気になってついつい頁をめくってしまう。

 間違いをただすことができない、というのは多くの組織に共通することで、冤罪という恥ずべき出来事を正すことができない状況に、主人公が反発しつつも弱腰な対応をするのが、とてもリアル。それでも、最後は事実が明らかになり、後味は悪いけれども犯人も判明する。

 しかし、最後に判断を彼に任せてよいのか、少し納得がいかないところもある。ほかのだれかを犯人に仕立てて安穏と生きるだけでも許しがたいのに、真犯人とわかるまでに何をしてきたか、卑怯という言葉では片付けられないくらいの真犯人。でも、現実世界でも、加害者というのはそんなものかもしれない。 

潔白 (幻冬舎単行本)

潔白 (幻冬舎単行本)