王家の遺伝子 DNAが解き明かした世界史の謎
DNAが解き明かした謎と、解き明かし切ってはいないけれど大いにヒントを提供した謎についての一冊。図表と平易な文章のおかげで、生命科学方面の知識がなくても楽しく読める。
シェイクスピアが醜悪な人物として描いたリチャードIII世。その容姿はシェイクスピアの描写とは異なっていたらしいことが、駐車場から見つかった人骨によって判明する。王族は家系が長く追えるため遺伝子の研究に適しているそうだけど、数百年の時を経て見つかっても身元が判るというのはすごいことだ。まあ、DNAは万能ではないというのも本書内で何度か出てくるように、歴史として伝わっていることと合わせて特定できることが多いようだけど。
長期の時を経てというと、ツタンカーメンやラムセスとその親族についても、3000年ほど昔のミイラから、ここまで判るのかと驚く。謎のミイラのDNAからわかる血縁関係、そこから補強される伝わっている歴史における出来事。
著者があとがきで示す「分子歴史学」「DNA歴史学」が確立され発展すると、歴史は更に面白いことになりそうだ。