CoffeeAndBooks's 読書日記

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愛してるよ、愛してるぜ

 山田詠美と阿部譲二と言えば、山田詠美氏がデビューした当時に、恋人との問題を抱えていて対談をキャンセルしたところ、後日、花束と優しいメッセージを届けたエピソードがすぐに思い出される。以来、とても仲の良い様子はエッセイ等からうかがえる。この対談は長年の友情をはぐくんだ後の二人が互いの配偶者も時に登場させつつ悩み相談にこたえるというもの。

 前述のエピソードからわかる通り、女性にだけなのかもしれないけれど優しくて情のある阿部譲二氏と、「つみびと」で弱者に対する優しさと冷静な視線を見せた山田詠美氏であるけれど、自分の意志でアウトローな人生を若い時分に送った、突き抜けた人たちでもあるわけで、悩み相談に対して少し突き放しつつも愛のある回答をしている。とはいえ、悩み相談以外の対談が分量としては多い。まあ、二人がどんな回答をしそうか、過去の著作を読んでいる者には簡単に想像ができるもので、よくこの二人に相談しようと考えたものだ(本当の相談が寄せられているとしたら)、という感じなので、致し方ないのかもしれない。脱線が面白いから良いのではないか、と。ただ、山田詠美氏が聞き役に回りがちなので、エイミー節を目当てで読むと少し効用が不足するかもしれない。過去を振り返りつつ話す阿部譲二氏に対し、二度目の結婚前後で恋愛関連の話題が現在進行形の山田詠美氏が突っ込みを入れながらも良い聞き役として面白いエピソードを引き出している印象。しかし、とても聞き上手。

 

愛してるよ、愛してるぜ (中公文庫 や 65-2)