CoffeeAndBooks's 読書日記

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今につながる日本史

 執筆の背景は、BSの番組にてキャスターとしての仕事をするため、『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』の言葉をヒントに効率的な知識や背景の仕入れのため歴史を勉強したことがきっかけとのこと。ということで、各項目は、最近の出来事と歴史上の出来事を対比させた構成になっている。たとえば、「だから光秀はキレた?本能寺の変「珍説」の真相」では、記憶に新しい「このハゲ、ちがうだろう」事件と本能寺の変を対比。

 本書は歴史ミステリーではなく、あくまでも歴史をヒントに今起きていることを理解することが目的なので、歴史の真相に迫るような深さは求めていない。ただ、多岐に渡る文献に言及しており、大人の教養を身に着ける上では非常に参考になる。ここで諸説存在することやそれぞれの説の妥当性や信ぴょう性を一定は評定してくれるため、興味のある歴史上の出来事に対して、自分なりの考えを深めたいと思ったときの最初の数歩が示される点もありがたい。 

 また、対比の対象となっている現代の出来事についても、日々の報道で読んでいた時の知識は断片的であったり、その瞬間の最新であったりするので、少し落ち着いてから全体を俯瞰してみると自分の知識に誤りがあることも多い。こうした点の修正にも、非常に参考になるまとめ方がされていると思う。自分自身でも、面白いと思った出来事はウォッチし続けて、後でまとめたり、似ていると思われる歴史上の出来事を対比してみても良いのかもしれない。

 そして、歴史好きのスモールトークを改善するのにも参考になると思われる。序論の「今は歴史本のブームといわれるが、」のくだりに、膝を打つ。最近は「〇〇の真相」としてトンでもな珍説を嬉しそうに語り続ける人や、歴史好き同士が集まるとそれぞれがニッチを極めすぎていて容易には話が弾まないという事態が割とある。私自身も関心を持っている領域の歴史について、きわめて細に入り、な話をしてしまうことも多いので、中道的な多くの人に興味を持ってもらいやすい、楽しんでもらえる知識の開陳がどんなものか、という点でも非常に勉強になった。

 元々がオンラインコラムということで、各項が独立していることとフォーマットが安定していることは、隙間時間に関心のある項、興味を引いた項を読むのに向いている。最近は自宅で仕事をしているので、ちょっとした会議の隙間時間に本を読むことにしているが、あまりにも引き込まれてしまうもの、区切りのないものは向いておらず、選書に悩むことも多い。そういった人には是非ともおすすめしたい一冊。

今につながる日本史 (単行本)

今につながる日本史 (単行本)

  • 作者:丸山 淳一
  • 発売日: 2020/05/19
  • メディア: 単行本