CoffeeAndBooks's 読書日記

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血も涙もある

 正しさを盾に誰かを糾弾する人には絶対にならない山田詠美。今回のテーマは不倫。料理研究家、その夫、そして料理研究家の助手であり夫の不倫相手の3人が交互に語り手となる構成。誰もが事情を持っていて、一方的な悪者はいない、道徳的な倫理で誰かの関係を糾弾するべきではない、というフェアな視点が山田詠美らしいなと思う。

 そして、かっこ悪くなりきれない登場人物も、いつも通り。全員が理性的にことを運んでいく。ちょっと淡々としすぎのような気もしたけれど、ヒステリックな感情の爆発がなくても、大切な関係を失うことの切なさは伝わってくる。まあ、全員が若者ではないから、実際に仕事や社会生活や、恋愛以外のことが人生の拠り所になってくると、こんなものかもしれない。

血も涙もある

血も涙もある