CoffeeAndBooks's 読書日記

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Flowers for Algernon

 野口悠紀雄氏の『「超」英語独学法」で『アルジャーノンに花束を』が元々は短編であったことを知り、また、長編化されたことにより余計なストーリーが混入して密度が低くなったと書かれていたので、”The Science Fiction Hall of Fame, Volume One”に収録されているバージョンにて。

 細かい設定が私の知っているバージョンとは異なり(たとえば主人公の勤務先がパン屋ではなくプラスティック工場だったり)、新鮮だった。そして、余計なエピソードがない分、より『知性とは何か』『幸せとは何か』を深く考えられたかもしれない。

 原文で読むと、ネイティブも聞いた通りに綴ると起こる誤字(should write →shud rite)や、口語表現をそのまま書き起こした文章と高度に練られた文章の違い、と言った部分も勉強として興味深い。ただ、初期の誤字だらけの文章は英語に慣れていないと読みにくいし、教授を超える知能を得た段階の文章は単語や構造も複雑で、こちらもまた少し読みにくいかもしれない。ただ、翻訳ではなく原文で読むべき、というのは納得。

 ストーリー自体も、昔読んだときとは印象が違った。知能指数が向上することによって、主人公のチャールズは、それまで友だちだと思っていた同僚からからかわれていたことに気付いたり、天才だと思っていた教授にしても能力に限界があることを気付いたり、という面だけを見ても、自分自身にチャールズの周囲の人間のような心理が100%ないとは言い切れないところに苦い気持ちになったし、気付かなければ思い悩むことのないことを知る辛さや、笑われていたことを知る辛さも身に迫る。それでも、教授に向けて実験について語る部分で、冷静に事実を受け止めて総括ができることは知性によるはずで、知性によって得る不幸もあれば、幸せもあるのだと思う。

 そして、最後に語られる学習への意欲や他者への気遣い。チャーリーの歩んだ手術からの日々は、私達が成長して知的なピークを迎え、いつかすべてを忘れたり、昔は理解できたことを理解できなくなるプロセスと同じだと思うけれど、私もこんな心でいられたらと思う。