CoffeeAndBooks's 読書日記

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魂のまなざし/HELENE

フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベック。彼女の人生のうち、忘れられた画家だったシャルフベックが再発見された時期を切り取り、母との関係、彼女の人生に重要な意味を持つ友人たちとの関係が描かれる。美しい挫折と復活の物語。

1862年生まれのシャルフベック(1946年没)、舞台はフィンランド内戦の前後だから1918年頃ということで、いまや連立政権党首が全員女性で、男子が『僕、男の子だけど党首や首相になれる?』と不安を持つくらいのフィンランドとはいえ、家父長制の世界。再発見後の個展で多くの絵が売れたあと、本来なら娘の稼ぎは家長のものだけど『分配してやる』と兄が言ってくる光景を観ると、これは映画の本質的なメッセージではないものの、フィンランドの100年はものすごいものだなと思ってしまう。

さて、そんな家父長制の世界での母子関係について。私自身も母との関係が良好とは言えないけれど母の面倒を見ないわけにはいかない状況にあるので、見ていて苦しくなった。娘の生き方を否定し、兄をかわいがり(当時の価値観では自然なことだったのだとしても)、それでも兄ではなくシャルフベックが世話をする。まあ、どうにもならないのが血縁というものではあるけれど。

そんな環境に生きるシャルフベックを常に支えるのは、同じく芸術家で若い時分からの友人であるHelena Westermarckと、彼女の絵画のコレクターであり後に彼女についての著作を記すEinar Reuter。Einar Reuterとの出会いからの一連の出来事は、男女逆にすると割と世の中に起こりがちな悲喜劇かなとも思うけれど、最後になぜその境地になれたのか、というところは多く語られない。少し余白が多めの映画。

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