CoffeeAndBooks's 読書日記

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顔のない裸体たち

 先日に引き続き、平野啓一郎。とはいえ、仕事もあるので作者比で少し短めの作品から。「顔のない裸体」はモザイク処理された(いかがわしい)画像の登場人物。

 地味な教師のミッキーと冴えない公務員のミッチーがネットで知り合い、野外での露出行為に及び、最後にちょっとした事件を起こしてしまう。出来事自体は、実際に似たようなことが起きていそうだし、ものすごく衝撃的なものでもない。ただ、少し通常と異なる行為に没頭してしまったり、一線を越えてしまったりする人の心理を描いたところは面白い。特に、ミッキーが自分で持て余していた身体的特徴をその後の経験を通じて自信を持っていく過程の描写。そして、ネット上の人格で積極的になって、ちょっとしたスリルを楽しんでいたつもりが、エスカレートしていく行為や関係性に対して覚える恐怖や戸惑い。色々と考えさせられる。

顔のない裸体たち (新潮文庫)

顔のない裸体たち (新潮文庫)