CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

2016-01-01から1年間の記事一覧

逢えない夜を、数えてみても

ピアノの調律師と自動車の整備士のカップル。とても良い関係でありつつ、主人公は中年男性にも心惹かれ、という良くありそうな始まりだけど、後半の展開は予想を裏切られ、面白く読み進めた。最期の結論も少し驚いた。男女どちらの立場に立ってみても、その…

文庫X 殺人犯はそこにいる

盛岡の書店からはじまった謎の本「文庫X」のブーム。都内の書店でも、手書きのカバーを付けたバージョンが平積みに。といっても、こちらでは手書きカバーの上に書名と著者名が書かれてはいるのだけど。 この本は、栃木と群馬の県境で連続して起きた女児殺害…

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場/Eye in the sky

eyesky.jp 軍事作戦の巻き添えで多くの命が奪われている。テロリストなら殺していいという話ではないけれど、まったく関係のない無辜の市民が亡くなるのは本当に悲しい。それでも、平和を守ろうと思ったら攻撃するほかない場合があるのも事実。 この映画は、…

小さな恋のものがたり

いつの間にか完結していた小さな恋のものがたり。連載開始は1962年。作者が体調不良を経て、絵もうまく描けなかったと言いつつ完結させた最終巻。単純な絵に見えて難しい絵は、たしかに過去のものとは違うけれど、そんな粗が気にならない素敵な仕上がりだっ…

エリザベート

www.tohostage.com 帝国劇場のエリザベートがあまりにも素晴らしくて、余波で購入したDVDが到着。 花總まりの可憐さは、愛された皇妃のイメージにぴったり。そして、城田優のトートも華やかでよかった。ということでWhite版を購入したけれど、いずれでも花總…

生産性

マッキンゼー式〇〇の玉石混淆ぶりはなかなかのものだけど、伊賀泰代氏の著作は2冊ともとても参考になった。日本の組織には「生産性」と「リーダーシップ」が欠けているということで、完全に同意ではないけれどうなづけるところも多い。 工場ではストップウ…

天才ファミリー・カンパニー

母子家庭の天才高校生が、母の再婚によって謎の多い能天気だけどサバイバル能力のやたら高い親子と出会い、いろいろとリズムを狂わせられながら成長して、すごいことを成し遂げてしまう物語。すっかり忘れていたけど、同じ作者による別の漫画を読んでいて思…

貴婦人の訪問

www.youtube.com 「むかし妖精、いま妖怪」と自称している涼風真世。50歳過ぎてこの美貌は確かに妖怪としか言いようがない。そして、普段のかわいらしい佇まいとは全く異なる迫力、凄み。クレア役は涼風真世以外ありえないと思わせる。歌も素敵。 なお、この…

トヨトミの野望

どこかの戦国ゲームのようなタイトルだけど、経済小説。名古屋にある巨大自動車メーカーをモデルにした小説というか、仮名にしただけのノンフィクションというか。技術VS経営、創業者VSプロ、ビジョンVSビジネス、と両立も当然できることながら対立しがちな…

死者の書

完全な漫画化ではなく、ガイドブックのようなものを目指して描いたと作者は語るけれど、その試みは成功だと思う。世界観に圧倒され、原作を読みたいと思った。 女帝孝謙天皇時代の名家の女性である藤原南家の郎女が写経をするうちに不思議な力に誘われ大津皇…

君たちはどう生きるか

主人公コペル君は少し幼い(実際は中学生の設定なのに最初に読んだときはカツオ君とマスオさんくらいの関係を想像しながら読んでいた)けれど、頭が良くて心根も優しい少年。そんな彼が父親代わりとまではいかないものの、何かと面倒を見てくれているおじさ…

ダーリンは70歳/高須帝国の逆襲

漫画家 西原理恵子氏と交際宣言の高須克哉氏によるエッセイ。なんと、一度は書店に並んだのに絶版になっていたらしい。言葉狩りか。そして、Amazon Kindleにて青空文庫のような表紙で公表されている。 ダーリンは70歳/高須帝国の逆襲 作者: 西原理恵子,高…

通訳ガイドというおしごと

試験対策本は多いけれど、どうやって仕事にするか、という本は少ないような気がする通訳ガイド。序盤にも紹介される通り、やはり通訳ガイドで食べていけている人は多くはない様子で、専業でやっていくにはかなりの営業努力が求められそうだ。 この書籍では、…

手紙は憶えている/REMEMBER

認知症の進む老人が手紙に書かれた情報を元に、アウシュビッツのブロック長に復讐を試みる数日間の物語。たいていの映画は予想を裏切る終わり方をするものだけど、これも同様。それにしてもすごい。人は人をここまで騙せるのかと驚く。 主人公ゼブは妻の死後…

ジャコモ・フォスカリ

テルマエ・ロマエが大ヒットしたヤマザキマリ氏による、退廃的な雰囲気の漫画。テルマエ・ロマエはエネルギーに溢れる男性が主人公だったけど、こちらは物静かで翳のある中年男性。戦後すぐの日本を舞台に、ファシズムに祖国でなじむことのできなかったイタ…

銀のアンカー

新卒就活についての漫画。天職とはいうけれど、社会人経験のない学生にとって、自分に向いた職業を探すことは難しい。特に、B to Bの世界は見えにくい。本書は、アメリカのカリスマヘッドハンターだった男性が日本に帰国するところから始まる。そして、本業…

ベストセラー 編集者パーキンスに捧ぐ/Genius

best-seller.jp 映画を好きな人間が集まると、邦題や字幕への不満は多い。この邦題は素敵だけど、ちょっと違和感がある。トーマス・ウルフという天才作家と、天才の書いた小説を世に出すために共同作業を行った編集者の微妙な関係を表すタイトルは、せめて、…

深夜食堂

読むたびに、日本人で良かったと思うのは、この漫画。正直、こんなに長く続くとは思わなかったスタイルながら、飽きさせず淡々とした面白さを維持している。舞台は基本的に「深夜食堂」という名の(正式には名前はなくてみんながそう呼んでいるだけのようだ…

落語心中

ついに完結。 最初はお調子者の不良青年が更生していく話かと思っていたら、そうではなくて名落語家である八雲師匠の友情、愛情と後悔が主題の何とも切ない物語だった。才能に溢れる一方で何ともダメな助六と努力も積み重ねている菊比古(のちの八雲)、最初…

GATTACA/ガタカ

古い映画になってしまったけれど、未だに時々観てしまう。 遺伝子操作によって、親の(社会の)意向に沿った子供が生まれるようになった未来の話。この世界では、自然に妊娠して生まれた人間は「不適正者」として扱われる。何の操作も加えられていない人間は…

国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動

海上自衛隊の特殊部隊を創設した方による、創設の経緯と創設後の訓練に関する思想、退官後のフィリピンでの生活。書きぶりは落ち着いているものの、ものすごい迫力というかプレッシャーを感じる一冊だった。 読む前は思想的に偏った内容を心配していたけれど…

シン・ゴジラ

www.shin-godzilla.jp ゴジラシリーズには詳しくなく、映画館で観るゴジラは今回が初めて。しかし、最高に面白かった。 まず、ゴジラの最初の形態、とにかく気持ち悪い。よくこの造形、と思ってしまう。原始的な生物が進化していくさまを見せられると、どん…

アッラーの花嫁たち ―なぜ「彼女」たちは“生きた爆弾”になったのか?

diamond.jp 子ども自爆犯の増加というタイトルの記事だけど、これは自爆なんだろうか。確かに、騙されたに近いながらも自分から進んで復讐のために行うこともあるかもしれない。でも、別のニュースでは押さえつけられた少年が爆弾を巻き付けられていた。そし…

奇跡の教室~受け継ぐ者たちへ~/Les heritiers

kisekinokyoshitsu.jp 実話に基づく映画であり、実際の元生徒が脚本に関わり出演もしている。落ちこぼれを集めたクラスが何かに取り組んでやる気を手に入れるというのは、『陽のあたる教室』や『レッスン!』など過去にも多くの映画があり、珍しいものではな…

イレブン・ミニッツ/11 Minutes

ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキのサスペンス。5時からの11分に起きた出来事を、関係者の複数の視点から描く。複数の登場人物の行動が段々と一つの出来事に集約されていく、というのは別の映画でもあったかもしれないけれど、このイレブン・ミニッ…

人生2割がちょうどいい

電通のクリエイティブディレクターから独立してエージェンシーを立ち上げた岡康道さんとコラムニストの小田嶋隆さんが日経ビジネスオンラインで連載していた対談をまとめた一冊。 抽象的な会話をする人間の方が尊敬されるけれど、自分はどんどん具体的な会話…

バトルスタディーズ

夏と言えば甲子園。ということで、PL学園野球部出身の漫画家による高校野球漫画に手を伸ばす。PL学園をモデルにしたDL学園という高校の野球部を舞台に、主役は1年生。 厳しい上下関係、下積み生活が今のところは続いているけれど、あまりネガティブには見え…

食魔 谷崎潤一郎

谷崎潤一郎といえば、食い意地。確かに、こうして並べられると谷崎潤一郎の描く悪女はとにかく食べる。食べ過ぎて養っている男性が請求書に耐えられなくなるくらいに。延々と食事が続くと言えば、本書中でも触れられている金瓶梅だけど、確かに生命力あふれ…

コンプレックス・エイジ

趣味にも賞味期限があるのか、ということを自分から考える機会はそれほどないけれど、時には「そろそろお金のかかる趣味は卒業を」とか、「いい歳なんだからそんな趣味は」と言われることはある。『コンプレックス・エイジ』はコスプレが趣味の26歳の女性の…

…すぎなレボリューション

お局OLが30歳を目前に、会社の飲み会で泥酔し同僚の誰かと関係を持ってしまうが、相手の記憶なしという始まりのストーリー4コマ。同じ出来事を複数の登場人物それぞれの目線から描いてみたり、構成も面白かった。 あることをきっかけに大変身、は少女漫画に…