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CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

蝉しぐれ

 下級武士の養子である主人公は、藩内の政争により父を失う。反逆者として切腹を命じられた父に対して、最後の面会で言えなかった言葉を後悔する場面は何とも胸をしめつける。「人間は後悔するように出来ている」という友人の言葉…この状況は『後悔』が取り返しのつかないものであり、人を苦しくさせるものであることを痛感させられる。

 

 その後、不遇ながらも精進し剣の達人となる主人公。父を含め大勢が処分された後も続く政争の両勢力の思惑などもあり、微妙な立場で成人し、さらには政争に巻き込まれていく。藩主の寵愛を受ける幼馴染も政争に巻き込まれ、時間を巻き戻すことが出来たら、とは『文四郎』と『おふく』でなくても思ってしまうはず。しかし、そうはできないので、主人公は周囲の助けも借りつつ立ち向かう。

 この周囲の助けにも色々な因果があって、とても現実味がある。「父を恥じるな」と言ったとおりに器の立派さを感じさせる父の生前の行いによって残された文四郎が助けられ、結果として文四郎は他の人を助けることができる。もちろん、文四郎自身も気持ちのよい人間であって、相手を慮ることのできる主人公だからこそ、長い付き合いでもない鶴之助を含めて、友情によって身を危険にさらしつつ助けてくれる仲間がいるのだけれども。登場人物たちの関係は、人の生き方について色々と考えさせられる。

蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)

 

 

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