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CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

無私の日本人

 貧しい宿場町を救うため、お上にお金を差し出し、利息で町を救おうとした商人・穀田屋十三郎とその仲間たち。映画『殿、利息でござる!』の原作でもあるけれど、映画予告のドタバタした雰囲気はなく、全体を通じて悲壮感が漂っている。しかし、この十三郎の気持ちの強さはすごくて、きっちり無理難題と思われた金額を用意して、周りのサポートも得て悲願を成就させる。それにしても、これだけの偉業を誇ってはいけない、子孫は常に町の集まりでも末席に座るべしと言い残すのはすごいこと。

 武士道が武士だけのものでなく、江戸時代の町人・農民の矜持が素晴らしかったというエピソードは『蜩ノ記』における源吉を思わせる。幸いにして、十三郎とその仲間たちは命を捨てることなく偉業を達成できたけれど、その覚悟は並大抵でない。本当に私心があったらできない。

 

 ほかに、市井の儒学者・中根東里や尼僧・大田垣蓮月に関する評伝も収録されているけれど、後世に名の残らなかった偉大な人々を紹介しようという意欲は素晴らしいものの、少し情報量が異なるため本としてのバランスは崩れたかもしれない。ただ、私心を持たず人を利する生き方をした清々しい昔の日本人を知ることができた点に感謝の一冊。 

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

 

 

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