醤油・味噌・酢はすごい-三大発酵調味料と日本人
私は海外に出ても、あまり食のホームシックを感じることがないのだけど、やっぱり時に和食か中華料理が食べられると少し嬉しくなる。醤油が恋しいのか、味噌(豆鼓のようなのも含めて)が恋しいのか、そのあたりは謎だけど、やっぱり染みついた味覚はあるのだろう。
本書は、醸造が専門の農学者による、発酵食品に関する歴史(進化の歴史と産地の変遷の両方に触れられていて興味深い)、と少しだけ専門的な化学的構成が触れられていて、同じ醤油でも濃い口と薄口、溜まり、といった名前の違いに化学的な説明がつくことによって、調味料を見る目が変わる。そして、料理や食事の際に漫然と調味料を選ぶのではなく、期待するべき効果を基に選択できたり、又は創意工夫のヒントを得て試行できたりするようになる。
やや専門的な情報も含まれるけれど、文章が平易だし、引用される文献は化学よりも歴史や文学の世界なので、とっつきにくさはなし。日本が誇る発酵食品の世界が本当に面白い。
なお、小泉先生は世界中の寄食にも造詣が深く、紀行エッセイもとても楽しい。もちろん専門分野のお酒醸造に関する書籍も面白い。そんなこんなで、読み始めるとついついコレクションしてしまいながら、引き出しの多さ・深さに驚くので他の分野でもおすすめ。
醤油・味噌・酢はすごい - 三大発酵調味料と日本人 (中公新書)
- 作者: 小泉武夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/11/16
- メディア: 新書
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