CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

グレイテスト・ショーマン/The Greatest Showman

 ミュージカル映画としては最高に大好きな映画。

 サーカスという舞台は、ミュージカル映画にぴったり。出演者も全員が芸達者で飽きさせない。そして、何も持たないところから始めた主人公が成功し、失敗しつつも最後に仲間と家族が残って、ハッピーな仕事がある、というのは最高に楽しい気分の映画。

 ただ、マイノリティを集めた見世物小屋で儲けようというのは褒められたことではないし、実際のP.T. Barnumがやっていたことは非人道的なことも多くあったわけで、史実が気になり始めると少し楽しみにくいところはあるかもしれない。でも、社会的に良くないと言われる団体や職業で搾取されている人たちが100%不幸ではない現実もあって、こんなきっかけでも居場所ができたら楽しい、という人たちが出てくるのもありえそうな話であり、いろいろと難しいところもある。なので、描かれているストーリーを純粋に楽しめる人に向いている映画かもしれない。

 

 

 

BUTTER

 月並みな感想だけど、すごい小説。テンポはゆっくりと、でもぐいぐいと引き込まれる。主人公の記者 里佳と一緒になってカジカナに惹かれ、何とも変な気持ちになってしまう。

 世間をにぎわすニュースに着想を得たストーリーは多くあるけれど、これはひとつ新しいスタイルかもしれない。犯罪行為や犯人の心の闇ではなく、いかに被害者が犯人に惹かれていくか、この美人でないモテモテ結婚詐欺師的な女性に対して周りがヒリヒリした気持ちになるか、にフォーカスしている。

 この作者の小説は同性の関係を描くのが絶妙で、ナイルパーチの女子会でも惹かれたり嫌悪したりの複雑な関係が読んでいて心をざわつかせたけれど、本作でも同様。とはいえ、ナイルパーチの女子会に比べるとさっぱりしているかもしれない。本作では、週刊誌の記者が、次々と婚約者を死に追いやった結婚詐欺師(しかも美人ではない)との接触を通じて、翻弄されつつ周囲の人々との関係を見つめなおすというもの。

 ブッフブルギニョンにこだわりを見せ、ロブションをこよなく愛するグルメなカジカナ。そんなカジカナのこだわりはバターで、バターご飯について熱く語る。バターご飯の面会の場面は、主人公と一緒にカジカナにのめりこみそうになってしまう。魅力的だとかそんな描写はないのに。

 カジカナの正体は結局よくわからなかったけれど、彼女に惹かれる気持ちの正体みたいなものについては、少し考えることができる、不思議な小説。 

BUTTER

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ターミナル/The Terminal

 ほぼ、空港の中だけで進行する物語。旅行者の男性が空港で祖国クラコウジアの内乱を知る。そして、無政府状態となった祖国のため、パスポートが無効になり、入国ができなくなり空港に留まることに。当初、英語もあまりうまくない主人公のビクター。いきなり言葉のわからない国でこんな出来事に巻き込まれたら、と思うと序盤から見ていてつらい。しかし、主人公は前向きで、空港生活の中で母国語と英語の本を読み比べて英語を習得したり、友達を作ったり、何ともすごい。

 しかも、トラブルから抜け出すことだけを考えているのではなく、入国の目的を果たすことを忘れていないし、ほかの人を気遣う気持ちも持ち続ける。とても素敵。あまり劇的なことは起こらないけれど、とても感動する映画。Amazon videoでも観ることができるので、土曜日の夜にコーヒーを飲みながら観るのにいいかもしれない。

 

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監査役 野崎修平

 監査役というあまり馴染みのない役職。立場が高いことはわかるけれど、何をしているのかよくわからない。何となくおじいちゃんたちがお茶を飲んでいるイメージ。実際、この漫画でも主人公を除く監査役たちはおとなしくお茶を飲むのが業務時間の主な過ごし方だったりもする。

 舞台は今はメガバンクになっている都市銀行と思われる銀行、主人公は優秀だけどとがっていて冷や飯を食べるタイプ。それが、見ている人は見ている、ということで巡り合わせから監査役に大抜擢される。続編では頭取にも。

 不良債権の処理に総会屋問題、後には業界再編の合併でシステム障害も。なかなかよく取材もされているのか、概ねリアリティがあるので、業界に興味のある人には面白いかも。監査役編は半沢直樹的な、悪に立ち向かい勝利するという話が中心ですっきりするけれど、その後の頭取編では意外な変節もあって、いろいろと考えさせられる。立場が人を作るということもあるだろうし、ずっと接している人々からの影響というのもあるだろうけど、人間関係において昔は違ったのに、と思うことは多くある。そこに潜む怖さがほんのり描かれているところはとても面白かった。

 

 

ドリーム/Hidden Figures

 今や、男女格差が114位(政治123位)の日本においても最大の広域地方公共団体の知事を女性が勤め、女性で役職を持つ人も多くいるし、アメリカでは大統領に女性が挑み大接戦を繰り広げた(しかも当初は彼女が勝つと誰もが予想していた)。そして、アメリカの前大統領は黒人だった。今も人種差別や性差別は多くの場所で行われ、先端的な企業でも主流は白人の男性であることが多いけれど、世の中は少しずつ平等や公平を手に入れつつあるように思う。その基礎には、偉大なことを成し遂げ続けた先人の歴史がある。そのことを強く感じた映画。

 この映画は、3人の女性が主人公。天才的な数学者であるキャサリン・ゴーブル・ジョンソン、計算係(human computer)を事実上は監督しつつも黒人女性だからという理由で昇進できないドロシー・ヴォーン 、優秀なエンジニアとしての素養を見せつつも黒人女性であるためにエンジニアになるための必須要件である学位を取得できないメアリー・ジャクソン。

 職場では、トイレも休憩場所も有色人種は隔離されている。そのため、キャサリンは Space Task Groupに異動後、そのビル内に有色人種用のトイレがないため40分かけて有色人種用のトイレに行く。実際のキャサリンは白人用のトイレを使用していたということで、映画用の脚色ではあるけれども、おそらく多くの非白人は同様の苦労をしていたのだと思われる。鑑賞後の感想として意見が分かれている、キャサリンの上司であるハリソン氏が有色人種用トイレの看板を打ち壊す場面についても脚色部分で、否定的な意見としては『見ている白人が安心するため』媚びている感じがすると言われている。私は、このシーンに実は肯定的で、これは白人で、男性で、かつ立場の高い人が正しいことをしたので意味があると思っている。この映画は差別の苦しさを描くものではなく、人種差別の中でも有意義な仕事をした女性たちがいて、彼女たちがやるべきことをやり続けた結果として報いられるという希望の物語だと思う。マイノリティが戦っているだけだと差別や壁はなくならない。やっぱり差別する側が、自分自身のせいかどうかは別にして、自分たちのしていることに気付き、正す行動が必要。だから、あのシーンには本当に感動した。

 そして、エンジニアになることを心に決めたメアリーが、白人向け高校に通うための歎願を起こすシーンも感動的だった。実際のメアリーは当初から学位を持っていたということではあるけれど、誰かが最初の一人にならなくてはいけない、というのは素晴らしいメッセージだと思う。本当に素敵な映画。

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国会女子の忖度日記: 議員秘書は、今日もイバラの道をゆく

 私も例の事件が起きるまで『忖度』なんて言葉は知らなかったけれど、『忖度』を日々の仕事としている議員秘書(それもベテランの政策秘書)が明らかにする議員秘書の世界と一部の議員に関するうわさや評価。ちょっと愚痴っぽさが気になるものの、衆院選投票日の今日、面白くて一気に読んでしまった。実名と匿名の微妙な感じもいろいろと憶測ができて面白い。

 議員との関係についてはそれほど驚きがないけれど、後援者との関係は「昔の話」と前置きがありつつも驚く。椅子をけられるパワハラくらいなら我慢できても、票のためにそこまで、と変な尊敬をしてしまう。そして、議員だけでなく、秘書も付き合うのかと思うと、大変なお仕事だ。

国会女子の忖度日記: 議員秘書は、今日もイバラの道をゆく

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女神の見えざる手/Miss Sloane

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 ワシントンDCの敏腕ロビイストが主人公のこの映画、ものすごく興奮させられる。勝利に取りつかれた天才、チームメンバーをリソースとして最大限に活用する徹底した合理主義は理解を得られにくいけれど、確実に結果を出す。とにかく、睡眠障害や薬物依存、エスコートサービスの常連などちょっと生活が破綻しているところもありつつ、しっかり仕事をしているシーンはかっこよすぎる。公聴会の最後は圧巻。まあ、自分がなりたい姿や一緒に働きたい存在ではないかもしれないけれど、一度はご一緒してみたい強烈な人物。

  そして、強烈なキャラクターを主人公に持ちつつ、ほかの登場人物もしっかりと描かれているなという印象。フォード君なんて本当に彩りだと思っていたら、意外にきっちり仕事をしてくれるし。また、衣装も素晴らしかった。10センチはありそうなピンヒールは別にして、働く女性にとって参考になるファッションも多い。

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敏腕ロビイストが駆使する 人を意のままに動かす心理学

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