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CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

江戸の備忘録

エッセイ・随筆 歴史 読書

 昨年、ヒットした映画「殿、利息でござる」の原作『無私の日本人』の作者による江戸の教育事情などを含む歴史雑学が詰まった一冊。古文書にあたり出典を明らかにしつつ分かりやすく読みやすい文章で書かれているので、安心して読めるし、仕入れた情報は思わず誰かに話したくなる。意外なことに多かった寺子屋の先生に占める女性の率の高さ、一方で奥屋敷で行動の不自由な女性の犬の溺愛ぶりを示す狆の墓など興味深い。年賀状の原点は年始のあいさつ回りで置いて帰った名刺というのも、『とりあえず名刺置いて帰ります』というような営業につながっているのだろうか、と考えると面白い。

 興味深いエピソードだけでなく、鈴木今右衛門の清貧エピソードなどは思わず涙が出てしまう。飢饉に際して人を救うために田畑・家財道具を売り払った夫に晴着を売って答える妻、そして最後には震える飢えた女の子を救うために自分の娘に着ている二枚綿入れのうち一枚を脱いで渡すよう促し、娘は快く応じる。それこそが夫婦が娘に伝えようとしていたことだった、と。私も見習わなくては。 

江戸の備忘録 (文春文庫)

江戸の備忘録 (文春文庫)

 
殿様の通信簿 (新潮文庫)

殿様の通信簿 (新潮文庫)

 
江戸の家計簿 (宝島社新書)

江戸の家計簿 (宝島社新書)

 

 

国盗り物語

小説 読書

 最近、進められて読み始めたら止まらず一気に読んでしまった。

 美濃の蝮 斎藤道三が油売りから一国を手中におさめ、娘の嫁ぎ先である織田信長が天下を取り、娘のいとこにあたる明智光秀が謀反を起こし3日天下の後に敗れるまで。

 近年の研究で、油売りから国主への成り上がりは一代で達成したものではなくて、親子二代の成果と言われているようだけど、二つの人生を歩む、それもいずれも美女と栄華がついてくるなどというのは誰もが夢見ること。それだけでも面白いけれど、人間関係や心情の描写が素晴らしく、利用された人たちにも血が通ってみえる。

 また、明智光秀が道三に仕えたことがあるかどうかが分かる情報はないとも聞くけれど、道三の弟子である信長と光秀という関係性が入ることで、少し気持ちがわかるような気もした。人の面前で恥を欠かされたことを恨み、という話も有名ではあるものの、相手は信長だし、と思えば謀反を起こすには至らないような気がしてしまう。ただ、同じように天才に師事しつつ、ある部分では自分が優れていると思っている相手が天下を取ろうとしている。そして、天下を取った暁には自身が粛清されるであろうことが予想できる、となれば、結末の予測も難しくはない一方でほかの選択肢もないという事態も想像できる。

 元々は道三の生涯だけを描くつもりだったという国盗り物語であるけれど、この後編は続編ではなく全編を通じて読むことに価値がある一連の物語、と思わされた。

 

国盗り物語1~4巻完結セット

国盗り物語1~4巻完結セット

 
国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 (新潮文庫)

国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 (新潮文庫)

 
国盗り物語〈第3巻〉織田信長〈前編〉 (新潮文庫)

国盗り物語〈第3巻〉織田信長〈前編〉 (新潮文庫)

 
国盗り物語〈2〉斎藤道三〈後編〉 (新潮文庫)

国盗り物語〈2〉斎藤道三〈後編〉 (新潮文庫)

 
国盗り物語〈第4巻〉織田信長〈後編〉 (新潮文庫)

国盗り物語〈第4巻〉織田信長〈後編〉 (新潮文庫)

 

 

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?

ビジネス 読書

 特許・知財の戦略について少し勉強。

 特許を取るということは、技術が公になるということ(特許公報はすべて見えてしまう)。そして、アイディアに国境はないけれど、特許には国境があるということで、日本で特許をとっても世界で権利が守られるわけではない。実際、日本企業の特許公報を見て研究開発の手間を削減している企業の話なども出てきて複雑な気持ちになる。でも、世界中で特許を取るなんて、余程の技術でない限り難しそうだし。

 特許の取得は、真似をされたときに真似されたと戦えるもの(形状の工夫など)には向くけれど、戦いにくいもの(製法・技術など)には向かない。だから、コーラの製法は秘密。ただ、タイトルに挙げられている伊右衛門のレシピは、特許により公開された部分を真似しても同じ味にはならず、宣伝効果も期待されるのでアリとのこと。オープンにするところとクローズにするところを考えるオープン・クローズ戦略が重要ということで、グリコのポッキーの例は分かりやすく興味深かった。 

 

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識

 
なぜ、伊右衛門は売れたのか。

なぜ、伊右衛門は売れたのか。

 
あの商品は、なぜ売れたのか

あの商品は、なぜ売れたのか

 

 

かんかん橋をわたって

読書 漫画

 展開が予想外過ぎて一気に読んでしまった。しかし、世の中には伏線を回収できない漫画が大量にある中、本書にはほとんど伏線がないように見受けられ、驚く。だからこその自由な展開なのだろうか。

 

 前半は、町一番のおこんじょう(土地の言葉で意地悪)を母に持つ男性に嫁いだ主人公が姑にいびられながらも健気に過ごしていると、土地には嫁姑番付なるものがあり、主人公は4位(4番目に不幸)と知る。そして、ほかの番付内の嫁たちと知り合い友情をはぐくむ。

 主人公は持ち前の明るさでほかの嫁たちと打ち解け、地域での味方も少しずつ増える。しかし、他人へのアドバイスを通じて自分の意外な性格を知ることになる。なんと、町一番のおこんじょうである姑に似てくる。姑からは『人の心を弄ぶ喜び』を知ったと目をかけられはじめ、主人公は悩む。『怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。』というニーチェの言葉のような世界。

 そうこうしているうちに、主人公は嫁姑バトルの元凶を知り、さらには姑と元凶との過去の因縁が明らかにされていく。最後は、多くの嫁と姑が集結し、怒涛の展開に。20世紀少年を読んだ時のような興奮を覚えた。それにしても、最後の最後に姑 不二子はかっこよすぎた。

 いくらなんでも9巻・10巻は突拍子もなくすごい展開だったけれど、昼ドラ的な家庭内バトルが、海原雄山/山岡史郎(美味しんぼ)やミランダ・プリスリーアンドレア・サックス(プラダを着た悪魔)のような師弟関係に昇華していく様子も面白かった。 

 

ザ・トランポノミクス

読書 政治

 エリート層の支配力の低下と言われる直近の米国大統領選挙。どうも、エリート主義への反発といった単純なものではなく、高所得者に対する増税による富の再配分を謳ったクリントン氏よりも、勤労機会の増加を謳ったトランプ氏が魅力的だったという点もあるらしい。何とか暮らしてはいけるけれど豊かではない人たちにとっては、社会福祉の対象になるよりも、働いて暮らし向きが向上する方が魅力的であるとのこと。これを読んでいると、もしかするとAI全盛になってベーシックインカムで暮らせる日は人間が最終的に望まなくて実現しないのかなあと思ってしまった。

 それはさておき、本書では対外政策についても予測がされており、日本に対してはそれほどネガティブな影響が現時点では少なそうとの見立て。メキシコ・中国への強硬路線はこれまでの言動から分かりやすい。そして、国内のエネルギー源の開発によってエネルギー政策は中東離れしそうであり、中東の政治情勢への介入は積極性を失うのではないかと。ななめ読みだとISに対する路線との折り合いが少し分からないところではあったけれど、泥沼を脱することになるのかもしれない。

 しかし、トランプ大統領は本当に任期満了するのかな。

  

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)
 

  

トランプ

トランプ

 

 

徹夜しないで人の2倍仕事をする技術

ビジネス 読書

 世の中が残業規制、労働時間短縮に向かう以上、同じ成果を出そうと思ったら生産性の向上は必須。とはいえ、ホワイトカラーは『思考時間の必要性』を言い訳に生産性の議論を避けようとする人も多い。でも、そこで思考停止せずに分業やパターン化による効率化は必要だし、考えるにしても結果の成功率を上げていかなくてはいけない。なんといっても、想像的な仕事で効率化の概念が当てはまらないと思われがちな漫画家が、それもヒットを何作も世に送った漫画家も生産性を高めることで効率的に成果を出しているのだから、一般的なビジネスパーソンだって同様に試せることはあるはず。

 読んでいて思ったのは、職場で改善の必要なメンバーが延々と考え込んで袋小路にはまり挙句締め切りを過ぎてからできませんでした、となってしまうことがある一方で、効率的に物事を進め成果が出せるメンバーは既存のパターンをうまく使って新しいものを考えているな、ということ。本書でも「企画は考えて出すものではない」「ベタを貫け」と書いてあるけれど、ずっと考えていれば企画が降ってくるなんてことはめったになくて、やっぱりベタなものが一番。そこに新しい視点を持ち込むと、価値が生まれる。考えることに価値があると思ってしまう人には、是非とも一度読んでほしい一冊。

 

成功の五角形で勝利をつかめ!

成功の五角形で勝利をつかめ!

 
個性を捨てろ! 型にはまれ! (だいわ文庫)

個性を捨てろ! 型にはまれ! (だいわ文庫)

 

 

楽しく学べる「知財」入門

ビジネス 読書

 大手メーカーにて特許に関わり続けてきた弁理士による、意外な特許に関する話や特許に関するトラブル・係争などの紹介。長年、稲森謙太郎の筆名で科学技術ジャーナリストをされてきたということで、文章は読みやすく、面白いけれど取っ付きにくい知財について勉強になった。

 時には関係者への書面質問なども交えて調査がされていて、信頼感があるのに加え、やはりあの芸能事務所は対応が厳しそう、とか、最もはじけたファーストレディとタイム誌が評したという鳩山幸氏の対応は意外に素敵、といった面白さがあった。

 そして、やっぱり面白かったのはパロディ商標。ものによって認められたり、認められなかったり。そして、一度は権利が認められた商標に対して、取消決定→取消決定の取消訴訟・取消決定の取消判決→取消決定→取消決定の取消訴訟・取消決定の取消判決→維持決定→他社からの請求による無効審判という紆余曲折(本書では時系列の図示がされているので流れが分かりやすい)。類似性と依拠性というのは、言葉では分かるけれど主観の余地があるように感じられるものなので、議論が割れるのだろうし、時代とともに変わる部分もあるのだろう。

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)

 

  

知られざる特殊特許の世界

知られざる特殊特許の世界

 

  

女子大生マイの特許ファイル

女子大生マイの特許ファイル