CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

オーシャンズ8/OCEAN'S 8

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 オーシャンズ13の続編はなかったけれど、女性ばかりの華やかなオーシャンズもとても素敵。メットガラを舞台に、門外不出のアクセサリーを盗み出す。しかも、ただ盗むだけでないあたりが面白い。そして、なぜ、オーシャンズ7でなく8なのか、という仕掛けも、軽く驚かされる。うまい。

 ストーリーもさることながら、役者が最高で、どの訳もはまっていると見えた。サンドラ・ブロックの大胆不敵さも良かったけれど、なんといってもケイト・ブランシェットがかっこいい。低い声、スリムな体型、クールな立ち居振る舞い。リアーナの天才ハッカーもキュートで、いつもと違う魅力が楽しめる。さらには、カメオ出演の豪華な顔ぶれも。映画館の大きなスクリーンも堪能したけれど、カウチポテトでわいわい喋りながら観るのにもよさそう。

 ハラハラドキドキさせすぎない若干のご都合主義も、安心して楽しめる映画としては重要な要素だと実感させられる一作。

 

 

 

 

珠玉の短編

 『アニマル・ロジック』の頃の圧倒的な感じはなくなったけれど、やっぱり面白い。 

 表題作は期待を裏切るもので、スプラッタを得意とする作家が『珠玉』という単語に取りつかれるもの。世間的な山田威詠美のイメージとはちょっと違うけれど、エッセイで読んでいる山田詠美からすると、彼女らしいアイディアかもしれない。ちょっと筋は違うけれど、『文体同窓会』を思い出した。

 ひとりの男性をめぐる不思議な関係を描いた『生鮮てるてる坊主』は印象的ではあったけれど、淡々としすぎているような気もする。

珠玉の短編 (講談社文庫)

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珠玉の短編

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The Bold, the Corrupt, and the Beautiful

 機内上映されていたこの映画。母と姉妹が出てくるのにどうして三代にわたる家族の、という説明があるのかと思っていたら実は姉妹というのが・・・。そこまでは想像も難しくないけれど、なぜ、妹が生まれたかという背景がわかると、すごく重い気持ちになる。

 舞台は40年くらい前の台湾。やり手の骨董商の母親は政治家に影響力を発揮するだけでなく、人の命も犠牲にできる冷血さ。一方で、露悪的な娘は実は弱く、実の母から受けた仕打ちを考えると、なんだか悲しい。そして、最後に勝って笑えるしたたかさを持つ人というのは実はそうは見えない。

 観ていて最後まですっきりしないけれど、引き込まれてしまう不思議なパワーがあるのも事実のこの映画。女性同士の家族が持つ難しさを描いている、という評価もあるけれど、どちらかというと周りを犠牲にしても上り詰められる人間が描かれているように思う。人の業をただひたすら描いているというか。同じ女系家族の葛藤でもジョイラッククラブとはずいぶん違う。

 

Bold The Corrupt & The Beautiful [Blu-ray]

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ジョイ・ラック・クラブ [DVD]

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グレイテスト・ショーマン/The Greatest Showman

 ミュージカル映画としては最高に大好きな映画。

 サーカスという舞台は、ミュージカル映画にぴったり。出演者も全員が芸達者で飽きさせない。そして、何も持たないところから始めた主人公が成功し、失敗しつつも最後に仲間と家族が残って、ハッピーな仕事がある、というのは最高に楽しい気分の映画。

 ただ、マイノリティを集めた見世物小屋で儲けようというのは褒められたことではないし、実際のP.T. Barnumがやっていたことは非人道的なことも多くあったわけで、史実が気になり始めると少し楽しみにくいところはあるかもしれない。でも、社会的に良くないと言われる団体や職業で搾取されている人たちが100%不幸ではない現実もあって、こんなきっかけでも居場所ができたら楽しい、という人たちが出てくるのもありえそうな話であり、いろいろと難しいところもある。なので、描かれているストーリーを純粋に楽しめる人に向いている映画かもしれない。

 

 

 

BUTTER

 月並みな感想だけど、すごい小説。テンポはゆっくりと、でもぐいぐいと引き込まれる。主人公の記者 里佳と一緒になってカジカナに惹かれ、何とも変な気持ちになってしまう。

 世間をにぎわすニュースに着想を得たストーリーは多くあるけれど、これはひとつ新しいスタイルかもしれない。犯罪行為や犯人の心の闇ではなく、いかに被害者が犯人に惹かれていくか、この美人でないモテモテ結婚詐欺師的な女性に対して周りがヒリヒリした気持ちになるか、にフォーカスしている。

 この作者の小説は同性の関係を描くのが絶妙で、ナイルパーチの女子会でも惹かれたり嫌悪したりの複雑な関係が読んでいて心をざわつかせたけれど、本作でも同様。とはいえ、ナイルパーチの女子会に比べるとさっぱりしているかもしれない。本作では、週刊誌の記者が、次々と婚約者を死に追いやった結婚詐欺師(しかも美人ではない)との接触を通じて、翻弄されつつ周囲の人々との関係を見つめなおすというもの。

 ブッフブルギニョンにこだわりを見せ、ロブションをこよなく愛するグルメなカジカナ。そんなカジカナのこだわりはバターで、バターご飯について熱く語る。バターご飯の面会の場面は、主人公と一緒にカジカナにのめりこみそうになってしまう。魅力的だとかそんな描写はないのに。

 カジカナの正体は結局よくわからなかったけれど、彼女に惹かれる気持ちの正体みたいなものについては、少し考えることができる、不思議な小説。 

BUTTER

BUTTER

 

  

 

ターミナル/The Terminal

 ほぼ、空港の中だけで進行する物語。旅行者の男性が空港で祖国クラコウジアの内乱を知る。そして、無政府状態となった祖国のため、パスポートが無効になり、入国ができなくなり空港に留まることに。当初、英語もあまりうまくない主人公のビクター。いきなり言葉のわからない国でこんな出来事に巻き込まれたら、と思うと序盤から見ていてつらい。しかし、主人公は前向きで、空港生活の中で母国語と英語の本を読み比べて英語を習得したり、友達を作ったり、何ともすごい。

 しかも、トラブルから抜け出すことだけを考えているのではなく、入国の目的を果たすことを忘れていないし、ほかの人を気遣う気持ちも持ち続ける。とても素敵。あまり劇的なことは起こらないけれど、とても感動する映画。Amazon videoでも観ることができるので、土曜日の夜にコーヒーを飲みながら観るのにいいかもしれない。

 

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監査役 野崎修平

 監査役というあまり馴染みのない役職。立場が高いことはわかるけれど、何をしているのかよくわからない。何となくおじいちゃんたちがお茶を飲んでいるイメージ。実際、この漫画でも主人公を除く監査役たちはおとなしくお茶を飲むのが業務時間の主な過ごし方だったりもする。

 舞台は今はメガバンクになっている都市銀行と思われる銀行、主人公は優秀だけどとがっていて冷や飯を食べるタイプ。それが、見ている人は見ている、ということで巡り合わせから監査役に大抜擢される。続編では頭取にも。

 不良債権の処理に総会屋問題、後には業界再編の合併でシステム障害も。なかなかよく取材もされているのか、概ねリアリティがあるので、業界に興味のある人には面白いかも。監査役編は半沢直樹的な、悪に立ち向かい勝利するという話が中心ですっきりするけれど、その後の頭取編では意外な変節もあって、いろいろと考えさせられる。立場が人を作るということもあるだろうし、ずっと接している人々からの影響というのもあるだろうけど、人間関係において昔は違ったのに、と思うことは多くある。そこに潜む怖さがほんのり描かれているところはとても面白かった。