CoffeeAndBooks's 読書日記

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愛をこうひと

 下田治美の小説『愛を乞う人』のコミカライズ版。

 ただ理不尽に虐待される印象のあった小説版に比べると、母親が自分の置かれている状況に怒り落胆し、原因を子供においてしまったこと、という虐待に至る背景が描かれているように思う。原作の方が主人公の心の葛藤とトラウマからの脱却に焦点を当てている一方、漫画の方が母子の関係に焦点を当てている印象というか。だから、番外編『闇がひらくとき』につながったのかもしれない。ただ、番外編も含めて読むと、漫画の方は、虐待をする側に理解を示しすぎなのではないかと思うのも事実。親も人間で成長を続けるものだし、変化もするだろうけど、心の整理はそんなに簡単なものではない。とはいえ、怒りや恨みを持ち続けることは当人にとっても良いことではないけれど。とても複雑な気持ちのまま読み終わる。 

愛をこうひと (ぶんか社コミックス)

愛をこうひと (ぶんか社コミックス)

 

  

愛を乞うひと (角川文庫)

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