CoffeeAndBooks's 読書日記

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ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅

 不勉強で、ダークツーリズムという言葉はつい最近まで知らなかった。戦争、災害、病気、差別、公害といった影の側面に焦点を当てた旅を、ダークツーリズムと呼ぶらしい。例えば、夜景と鮨が有名な小樽は、北のウォール街と呼ばれたり、鰊御殿と呼ばれる豪邸が建ち並んだり、と栄華を誇った時期がある一方、小林多喜二を輩出した地であり、栄えた町の負の側面として遊郭やそこで働くことを強いられる女性がいたり、という暗い部分があったり、その後の衰退の歴史も明るいものではない。そういった面にも目を向けて旅をする、というのは、ただ美味しいものを食べてきれいな景色を見て帰る旅よりも、印象に残るだろうと思う。すべての幸せな家庭は互いに似ていて、不幸な家庭はそれぞれに不幸だ、と言われるように、不幸な歴史というのはそれぞれに違いが明確に感じられるから。

 この書籍では、ダークツーリズムの対象となる地域とその歴史を紹介する一方で、ただ暗い学びの旅を推奨するものではない。少し焦点がぼやける印象がないこともないけれど、やっぱり重い歴史だけでは余程の思い入れのある出来事出ない限りは旅に出る背中を押しにくい、と考えると、非常にバランスの良い一冊かもしれない。少なくとも、旅に出る前に、何か学ぶべきことや現地で考えることがないか、そんな準備をしようと感じた。 

ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅 (幻冬舎新書)

ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅 (幻冬舎新書)