エリザベート
帝国劇場のエリザベートがあまりにも素晴らしくて、余波で購入したDVDが到着。
花總まりの可憐さは、愛された皇妃のイメージにぴったり。そして、城田優のトートも華やかでよかった。ということでWhite版を購入したけれど、いずれでも花總まりの回。彼女の歌は、震えるくらい美しかった。
物語は、エリザベートが皇帝に出会うところから始まり、最期を迎えるまで。気ままに生きてきた彼女はハプスブルクの格式になじめず、我が子も皇太后に取り上げられ、その後に手元に戻った子との関係も難しく、放浪を求めるように。史実に詳しくはないので、実際にどんな人だったのか分からないけれど、ミュージカルの中での孤独な皇妃のイメージは死に魅入られたという設定に対して違和感がない。そして、最後まで自分が主導権を持って生きようとする姿勢は素敵だった。
- アーティスト: オリジナル・ウィーン・キャスト
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1997/02/26
- メディア: CD
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生産性
マッキンゼー式〇〇の玉石混淆ぶりはなかなかのものだけど、伊賀泰代氏の著作は2冊ともとても参考になった。日本の組織には「生産性」と「リーダーシップ」が欠けているということで、完全に同意ではないけれどうなづけるところも多い。
工場ではストップウォッチを使って生産性の向上に勤しむのに、ホワイトカラーには求めない、それはおそらくホワイトカラーを特別視しているということもあるのだろうけど、日本企業のホワイトカラーは職務定義が明確になっていないことも理由にあるように思う。また、社内のローテーションを前提にしている組織が多いので、専門家として集中するというよりはいろいろな業務を「よしなに」こなすことが職務になっていて、生産性を測りきれないところもあると思う。なので、本書で書かれていた他社のベンチマークは少し難しいかもしれないという印象を持つ一方、前年比で生産性の向上を測る/図るというのは非常に有用だと思った。特に、ローテーションのために何となく引継ぎが行われると、意義の不明な業務もレガシーとして引き継がれてしまうので、それを整理していかないと日々の業務が多すぎて生産性どころの話ではない組織になってしまう。
それから、教育研修に関するところは読んでいて反省した。ついつい、能力が不足する部下について、日本ではどうして能力を理由に解雇できないのだろうと思ってしまうこともあるのだけど、教育をあきらめつつ在庫として抱えてしまい、本人にとっても周囲にとっても良くない状況を生み出していたと反省。人に対してはあきらめず、「期待をしている、だから成長しましょう」というメッセージを伝え続けなくてはいけない。もちろん、最後は向かないところで座り続けるよりも能力を発揮できるところに移ったほうがハッピーではあるけれど。
また、トップパフォーマーとハイパフォーマーの育成の考え方についても非常に参考になる。ついつい、優秀な人を指導係にアサインしてしまいそうになるけれど、そこに収まらない人にはタスクとしてもっと難易度の高いタスクを与える必要がある、というのは言われてみるとその通りで腑に落ちた。
- 作者: 伊賀泰代
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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天才ファミリー・カンパニー
母子家庭の天才高校生が、母の再婚によって謎の多い能天気だけどサバイバル能力のやたら高い親子と出会い、いろいろとリズムを狂わせられながら成長して、すごいことを成し遂げてしまう物語。すっかり忘れていたけど、同じ作者による別の漫画を読んでいて思い出して大人買いしてしまった。それにしても、二ノ宮和子氏の好みの男性は一貫してそうだ。ちょっと攻撃的なくらいにクールで才能に恵まれていて、しかも何をやらせてもそつがない。一方で、女性の天才は一点集中型で、才能の集中している領域以外では全く何もできない印象を持っていたけど、天才ファミリー・カンパニーではバランスの良いヒロイン。
物語の展開は荒唐無稽で、アメリカの天才少女(ビジネスの天才)に、台湾の大富豪、そしてその孫の天才ハッカーなど、登場人物も豪華。長い物語も飽きさせない。
そんな中で優秀な主人公は周りに振り回されつつも能力を発揮して成功するけど、少しずつ人に助けられていることを学んでいく姿は感動する。
貴婦人の訪問
「むかし妖精、いま妖怪」と自称している涼風真世。50歳過ぎてこの美貌は確かに妖怪としか言いようがない。そして、普段のかわいらしい佇まいとは全く異なる迫力、凄み。クレア役は涼風真世以外ありえないと思わせる。歌も素敵。
なお、このミュージカルは悲喜劇といいつつ喜劇的な要素はとても少なくて、自分も含めた多くの人の嫌なところが凝縮されて見せられるので、後味は悪い。アルフレッドのコミカルな台詞はあるものの、若い頃に恋人にひどい仕打ちをしたアルフレッドが徹底的に追い詰められる様は完全に悲劇。
突然、アルフレッドが死ぬことを条件に多額の寄付をすると宣言するクレア。最初はクレアを非難する人々もお金の力に取り込まれ、最後はアルフレッドを責め始める。お金が人を狂わせる様は見ていて苦しくなる。アルフレッドはどうしようもない人間で、恋人を守るために苦境に陥るよりも小金のある女性を選んだり、追いつめられると家族を捨てて逃げようとしたり、本当にどうしようもない。奥さんは守ろうとしてくれたのに。でも、最後の最後に奥さんまで。。。彼に同情できる要素はないけれど、何とも悲しい。そして、町の人々も。
クレアをそんな風に変えてしまったのもアルフレッドであり、町の人々であり。少なくともアルフレッドの子供が車を運転する年齢になるくらいだから、相当な年月をかけて復讐のために着実に行動してきたクレア。でも、恋人に裏切られただけでなく、多くの人から悪意に満ちた行為を受けるなんて想像もできないだけに、クレアには同情してしまう。
- アーティスト: Chita Rivera,Roger Rees,Fred Ebb,John Kander,John Doyle,Terrence McNally,Graciela Daniele
- 出版社/メーカー: Broadway Records
- 発売日: 2015/07/10
- メディア: CD
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トヨトミの野望
どこかの戦国ゲームのようなタイトルだけど、経済小説。名古屋にある巨大自動車メーカーをモデルにした小説というか、仮名にしただけのノンフィクションというか。技術VS経営、創業者VSプロ、ビジョンVSビジネス、と両立も当然できることながら対立しがちな事項が凝縮させられていて面白い。巨大な組織のメカニズムを経営の目線から追体験できることはとても有意義。
そして、創業家の若様の成長物語としても面白い。本当に情けない若様(美人局にあって拉致されたり、若手の陰口を根に持ったり)であるけれども、先祖の創業した企業への誇りや自動車が好きという気持ちで成長を見せる。なかなか自分より優れたプロを評価できないけれど、自分が経営をしてみて実感することも多いはず。私自身、ここまでのレベルは到底ないけれど、管理職になると過去の上司のお小言やなんとも思わなかった上司のすごさがわかるといったことがあったので、少し身近に感じてしまった。
今も巨大企業としてグローバルの地位を保つ企業が舞台の物語なので、続編(あるなら)が楽しみ。
死者の書
完全な漫画化ではなく、ガイドブックのようなものを目指して描いたと作者は語るけれど、その試みは成功だと思う。世界観に圧倒され、原作を読みたいと思った。
女帝孝謙天皇時代の名家の女性である藤原南家の郎女が写経をするうちに不思議な力に誘われ大津皇子(この物語では滋賀津彦)との邂逅と春分・秋分の日だけのの俤びとの降臨を得る。滋賀津彦の思い人は耳面刀自ということで、郎女の先祖にあたり、何かの縁があったということのようだ。 なぜ、俤びとが見えるのか、は分かるような分からないような。これは原作を読むべきなんだろう。
しかし、蓮糸で編んだ曼陀羅、一度見てみたい。
君たちはどう生きるか
主人公コペル君は少し幼い(実際は中学生の設定なのに最初に読んだときはカツオ君とマスオさんくらいの関係を想像しながら読んでいた)けれど、頭が良くて心根も優しい少年。そんな彼が父親代わりとまではいかないものの、何かと面倒を見てくれているおじさんと交わすノートのやり取りから、子どもに哲学を伝えるという趣旨の一冊。でも、大人が読んでも十分に面白い。
序盤のすべての社会的活動が連鎖していることに気付く件やコペル君が豆腐屋さんの子と仲良くなる件もいいけれど、上級生に目を付けられた同級生が殴られるところで目を伏せてしまうところは大人になって読んだ方が共感してしまうかもしれない。ついつい長いものに巻かれてしまうことはあって、後悔して自己嫌悪に陥るけれど、それでは何も状況は変わらない。謝ったら許してもらえるようなことばかりではないけれど、それでもいいから行動することも大切。このおじさんは、話せば必ず分かってくれる、というようなことは言わない。でも、何もせずにコペル君が後悔しないようにガイドしてあげる。こんな大人にならなくては。