CoffeeAndBooks's 読書日記

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本日は、お日柄もよく

 楽園のカンヴァス(楽園のカンヴァス - CoffeeAndBooks's 読書日記)を読んで以来、気になっている作家。

 今回はお仕事小説ということだけれども、説得力のある小説だった。設定が現実世界からの借用だから現実味があるというだけではなく、たとえば14章で主人公が自分のミッションに燃えて事務所に入って言われる言葉。見出された主人公が天命と感じるスピーチに没頭するだけの物語だったら、夢中で頁はめくれなかっただろうなと思った。隋書のリアリティがプラスに働いている小説だったと感じる。

 しかも、結婚式のスピーチや弔辞も文章で書かれていて、それを読むと情景が浮かぶどころか涙が誘われてしまうところがすごい。映画では絶世の美女を描くのが難しいと言われるけれど、名スピーチを小説で描くのだって難しいはず。そして、文章全体に占める分量は少ないけれど、俳句も良いアクセントになっていた。私に俳句はまったく分からないけれど、ここにも粗はないんだろうと思わされる。

 それから、ひとりひとりの登場人物が今回もとても良かった。この人の書く小説には、嫌な人が出てこないところも素晴らしい。読んでいて前向きになれると言うと陳腐だけど、本当にそうとしか言いようのない一冊。

 

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

 

 

 

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)