CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

接待の一流 おもてなしは技術です

 デート編はさておき(バブル後の世代にはちょっとおなか一杯)、ホストとお店の関係を明確にしたうえで、もてなしの在り方を説く一冊。さすがにお店選びで「初めて来るんです」というような失敗は見たことがないけれど、ゲストにワインリストを渡す、は結構する人が多く当惑させられることが多いので、「ゲストに好きなワインを選ばせてあげる方が喜ばれるだろう」「ゲストが詳しいから下手なワインを選びたくないので選ばせるほうが良い」と思う人は是非とも読むべき一冊。

 できれば、もてなしの場において、ワインのテイスティングを誰がするべきか、についても触れておいてほしかったかも(見落としでなければ)。これも当惑させられることの度々ある事象のひとつ。

接待の一流 おもてなしは技術です (光文社新書)

接待の一流 おもてなしは技術です (光文社新書)

 
一流コンサルティング会社の秘書室が厳選  接待で使う銀座の名店100

一流コンサルティング会社の秘書室が厳選 接待で使う銀座の名店100

 

 カジュアルなお店を使う接待も基本の考え方は同じだけど、代わりに確立されたお店がないためお店選びの苦労があったり、お店の人との打合せも少し様相が違うところがあったり。このあたりは、『マンガ・黄金の接待』が参考になる。 

とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話

 お正月休み、Kindle Unmilitedで読めたので興味本位でダウンロードしたところ、驚きの世界にページをめくるのが止まらず、そのまま読み終えてしまった。著者はウェブを経由して仕事が始まった新人漫画家ということで、おそらく若くて、社会経験もそれほど豊富ではない様子。ただ、すごく責任感がある人で、テキパキした感じが見て取れる。そのせいで、おかしな編集者に翻弄されても自己犠牲で乗り切ろうとしてみたり、少しエキセントリックな対応を編集者以外の他社にしてしまったり、かなりの苦労をする。

 ベテランの有名な漫画家も編集者に起因するトラブルは枚挙にいとまがないわけで、特殊な世界ではあるのかもしれないけれど、この著者は社会人経験があるおかげか、少なくとも契約や法律という知識があることで救われているようにみえた。高校生なんかだと完全に搾取されそう。特に、漫画に限らず出版の世界は、私の乏しい経験では、お金に関することを曖昧にしたままで何かが始まることの多い世界という印象が強い。デジタルに料金表が作れる世界ではないけれど、神秘のベールのせいで不当な扱いを受けている人もいそうだ。

 

くるみ割り人形と秘密の王国/The Nutcracker and the Four Realms

 クリスマス映画はやっぱりハッピーなもの。バレエでおなじみのくるみ割り人形の世界のその後、という感じだろうか。主人公の名前はクララ・シュタールバウム、弟はフリッツではあるけれど、くるみ割り人形そのままの世界を描くわけではない。どうやら主人公のお母さんがくるみ割り人形の世界に夢をみる少女時代を過ごしていたようで、主人公はクリスマスのパーティでプレゼントを探す途中でその世界に迷い込む。

 随所で挟まれるバレエも美しい、ミスティ・コープランド。でも、バレエは足の動きが驚異的ではあるものの、足を映し過ぎかも。もっと色々な動きが見たかった。

 Sugar Plum(ドラジェの精)の名前にぴったりなルックスも素敵だった。しかし、彼女の過去の悲しみからの変容、というのは少女向けホラー漫画に多そうな話。やっぱり人形ってそんな感じなのかな。念がこもるというか。

 そして、この映画のメッセージは最近のディズニープリンセス映画らしく、主人公は誰かに見つけられたり助けられたりする存在ではなく、自分で自分の価値に気付き、誰かを助ける存在。自信を手に入れる瞬間の描写が素敵だし、最後のシーンも素晴らしい。どの世代が見ても楽しめるし、感動するはず。

www.disney.co.jp

 

海街diary 9 行ってくる

 海街diaryシリーズ、ついに完結。なんと12年にわたって連載されていたとは、私も歳をとるわけだ。もはや四姉妹の誰にも自分を重ねられないけれど、それでも誰もが感じる生きていくことの辛さだったり、ちょっとした瞬間に癒されたり、という瞬間に涙してしまう。そして、この姉妹のような複雑な背景は自分になくても、この物語を通じて描かれる心の傷やそれを乗り越える成長は、大抵の人に共通するするもので、ついつい感情移入、共感する人はきっと多いはず。

 仕事や学校がONで、それ以外をOFFとするなら、ONでしっかりしていても恋愛ではちょっとダメだったり、ONよりOFFがすべてと遊んでいたのにちょっとしたことから働くことの楽しさに目覚めて比重が変わったり、というのは、誰もが経験することだし、人生の中で行ったり来たりするもの。そして、どこかで経験した失敗を引きずって踏み出せない一歩とか、変えよう変わろうとしても変えられないよくないこととか、普遍的で身近な話。だから、いつ読んでも何かが自分に響くし、勇気づけられたりもする。

海街diary 9 行ってくる (フラワーコミックス)

海街diary 9 行ってくる (フラワーコミックス)

 
すずちゃんの鎌倉さんぽ―海街diary (フラワーコミックススペシャル)

すずちゃんの鎌倉さんぽ―海街diary (フラワーコミックススペシャル)

 

 

ピアフ

www.tohostage.com

 遂に今日が千秋楽。インタビューで『命をかけることはしていないけれど、命を削ることはしている』と語っているけど(大竹しのぶのライフワーク舞台『ピアフ』開幕~「命を削る想いで」 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス)、この鬼気迫る舞台を見ると大げさな表現ではないように思う。

 舞台は2時間半。パリの街角で歌を歌っているところを見いだされるところから晩年まで。人生が上手くいっているとはいいがたい状況ながら明るいところのあるデビュー前から、愛する人を亡くす悲劇や事故、酒や薬でボロボロになりながらも舞台に立たなければいけない状況を経て、段々と狂気を含みながら歌い続け、40代で晩年を迎えてしまうピアフ。歌おうとしても歌えない姿は、見ていて胸が締め付けられる。しかも、周囲の人がただ彼女を利用する悪人ばかりではなく、心のある人が存在しているなかで、それでも孤独を感じるしかない人生の切ない感じ。音楽の種類は少し違うけれど、ジャニス・ジョプリンをモデルにした映画"The Rose"を思い出させる。

 

エディット・ピアフという生き方 (新人物文庫)

エディット・ピアフという生き方 (新人物文庫)

 

 

SHINOBU avec PIAF

SHINOBU avec PIAF

 

 

The Rose [DVD]

The Rose [DVD]

 

 

チア☆ダン

 それほど期待せずに観たビデオだけど、これは素晴らしい。やる気のない女子高生の部活が、世界の頂点を目指し始めて、個人も成長すればチームとしても成長するという青春物語。仲良しクラブでは世界に勝てない。でも、仲間とはやっぱり仲良く皆で頑張りたい。この折り合い、厳しいけど乗り越える感動はやっぱり桁違い。

 日本大会からアメリカの一連の出来事は、本当に泣けてしまう。誰だって主役になりたいところ、チームのために自分を抑えられる大人な高校生。チームのために嫌われ者を買って出られる顧問の先生。職場の諸々を思いながら見ると、感慨深い。

 それにしても、みんな上手な役者で引き込まれる。どんどんキラキラ輝いていくところが見られて感動する。もっと早く見たかった!

 広瀬すずの福井弁がまた可愛い。アメリカで福井弁全開にしてやる、という気持ちも最高。 

 

だから、また行きたくなる。――伝説の外資系トップ営業が教える「選ばれるサービス」の本質

 はじめて川田修さんの著書に触れたのは、「かばんはハンカチの上に置きなさい」というもので、タイトルになっている教えはお客さまのお宅にお邪魔した際の心遣いを説くものだった。地面に直置きするかばんを訪ねたお宅の部屋の床に置かず、一枚ハンカチを敷く心配りは、言われてみるとはっとするけれど、なかなか思いつかない。そんな気配り名人の著者が、これまでに感動したサービスについて紹介する一冊は、言われてみると/接してみると感動すること想像に難くない一方で、なかなか思いつかない「ちょっとした」サービスばかり。いわゆるサービス業に従事するひとだけでなく、すべての社会生活を営む人に参考になる一冊だと思う。

 レベル11、という考え方が紹介されていて、サービスの期待値の最高が10とすると、それを超えるものがレベル11、感動を与えるものと定義されている。そして、このレベル11を体験した瞬間を並べられて気付くのが、レベル10からレベル11に移行するのには、実はたいした手間がかかっていないということ。そして、ほとんどコストはかかっていない。ただ、お客様のことを考える、接客に真剣に取り組む、それだけで実践できることで達成できる。

 そういえば、「かばんはハンカチの上に置きなさい」をはじめ、著者がこれまで伝えてきたことは、ほとんどがそれだなと思う。かばんを置くためのハンカチ一枚買うのも、「2分遅れます」と電話するのも、ほんの一瞬でできることだし、大したコストはない(ハンカチなんて貰い物もあるし、社用携帯があれば電話代もかからない)。でも、相手のことを考えて誠実にあろうとする姿勢がないとできないし、逆にできると多大な感動が与えられる。

 本書で紹介される事例は、同じ業態でなければそのまま真似られる心配りだけではないけれど、こんな視点で日々の生活をすれば、これだけのサンプルを集められるのだ、という勉強になる。

  

かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール

かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール