歴史とは靴である 17歳の特別教室
17歳の特別教室と副題がついてはいるけれど、大人が読んでも面白い。『無私の日本人』『武士の家計簿』など、著書が映画になるような歴史学者を呼んで特別教室とは、ちょっとうらやましいな。この授業を受ける生徒もしっかりしているので、質問がまた興味深い。高校生時代の私が受けても猫に小判の講義だけれども、この高校生たちには、非常に実りのある良い時間になっているはず。
歴史は嗜好品というよりは、実用品であると。非常に含蓄のある言葉。いくつかの対話を読んで思ったのは、歴史を学んで何かに活かす、という概念的な話だけでなく、関東大震災の時に津波が達した高さを知っていると自分の居場所の安全性がわかる、とか、世界のトイレの歴史を知っていたら建築デザイナーとして強いだろう、とか。
また、著者の大学の入り直しのくだりも興味深い。大学の制度に関する話も高校生には実利的なところがあるかもしれないが、個人的に興味を持ったのが入りなおす大学の決め手となった研究。大学の研究者は面白い研究をしているもので、「江戸時代の平均結婚年齢の研究」というのがあるらしい。歴史人口学という名前はこの本で初めて知ったので、少し勉強してみようと思う。